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2012-02-06(Mon)

ロシア・プーチンの誰も知らない錬金術 沿ドニエステル共和国で20年ぶりに政権交代したわけ

 旧ソ連内に存在する非承認国家の1つ、沿ドニエステル共和国で昨年12月に大統領選挙が行われ、エフゲニー・シェフチュク候補が当選、第2代大統領に就任した。(敬称略)

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 ソ連崩壊から20年間にわたり沿ドニエステル共和国の独立路線を指導してきたイゴール・スミルノフは、ロシアからの援護を受けられず強力なライバルたちの前に選挙で惨敗、あっけない幕切れを迎えた。

 この政権交代は、2つの意味を持っている。第1に、しばしばスミルノフ独裁と表現されてきた沿ドニエステル共和国の権力構造の多元性である。同国ではスミルノフ一族は通関(密輸が盛んな非承認国家において通関は一大資金源である)、治安関係を掌握し、「シェリフ」グループが小売り、流通を支配してきた。

 シェフチュクはこの「シェリフ」出身である。一方で、この国の工業生産の大半を叩き出す大企業はロシア資本傘下にあり、「平和維持」名目でロシア軍も駐留している。

 スミルノフ政権はこの3者のバランス上で成り立っており、シェリフとロシアが反対に回れば、スミルノフの再選はおぼつかなくなる。

 第2が、ロシア政府の影響力の強さである。上記のように、ロシアは沿ドニエステルの工業と軍事を支配しているが、これ以外にも、住民にロシア年金を支給し、様々な社会援助と称する補助金を流し込んできた。

 2006年選挙では、ロシア政府はシェフチュクに対するネガティブキャンペーンを張り立候補辞退に追い込んだが、今回の選挙では、逆にスミルノフ一族の援助金不正利用を攻撃し、その一方で、カミンスキーを「統一ロシア」の党大会に招いたり、資金を援助したりと早い段階で政権交代を画策してきた。

 金融危機以降、沿ドニエステルは不況から抜け出せず、ロシア政府の援助にますます頼り、スミルノフ自身がロシア資本と衝突したり、沿ドニエステル議会との対立を激化させたりとその指導力にロシア政府は不満を抱いてきた。

 シェフチュクは、かつて与党「刷新」を率いて議会議長まで務めていたが、大統領との対立激化の責任を取り自ら職から降りていた。その議長職と与党代表を継いだのがカミンスキーである。

 シェフチュクとカミンスキーとの間にさしたる政策の違いはなく、個性(性急で若いシェフチュクと穏便な中年カミンスキー)が異なる程度である。

 沿ドニエステル「共和国」は、モルドヴァ共和国内を流れるドニエステル川左岸とウクライナとに挟まれた細長い地域を実効支配しており、2010年統計によれば、住民数51.8万人(出稼ぎにより実際の定住者は40万人弱と言われる)、面積4163平方キロ(石川県程度の面積)、国民総生産(GNP)10億ドル弱の極小国である。

 ここにロシア政府が肩入れする理由は何だろうか。

 第1が、一般に言われているところの「対モルドヴァ外交のカード」である。

 沿ドニエステル問題を協議する「5+2」(沿ドニエステル、モルドヴァ、ロシア、ウクライナ、OSCE、EUおよび米国はオブザーバー参加)は2006年以来開催されておらず、交渉再開をチラつかせたり、沿ドニエステル駐留ロシア軍の撤退を示唆しながら、モルドヴァの外交、特にその親EU政策に影響を与えることが可能である。

 第2が、「ロシア資本のオフショア」地としての役割である。

 沿ドニエステルには、ソ連時代から国際競争力ある重工業が立地しているが、ほとんどがロシア資本によって買収されている。

 特に、モルドヴァ製鉄所(MMZ)と、モルドヴァ地区火力発電所(MGRES)は、沿ドニエステルの2大企業であるが、前者はウスマノフ率いるMetalloinvestが筆頭株主であり、後者はInter RAO(統一エネルギーシステムの海外部門)が株式の51%を所有している。

 沿ドニエステルにあるセメント工場もウスマノフが買収しており、ソチ五輪特需で大いに潤っていると言われている。ウスマノフは、プーチンの盟友として知られており、先のロシア下院選挙でプーチンを批判した週刊誌編集長をオーナー権限で解雇したことは記憶に新しい。

 ウスマノフはこの地にあるセメント工場も買収しており、ソチ五輪特需で大いに潤っていると言われている。

 これらロシア資本の企業活動に、ロシア政府は露骨な肩入れを行ってきた。例えば、2007年には、プーチンはモルドヴァ政府に働きかけ、モルドヴァ国内の送電線を用いてMGRES電力のルーマニア輸出を実現させている。

 その代償として、モルドヴァ政府は、沿ドニエステルから電力を「輸入」しており、2010年度にはモルドヴァの総消費電力の3分の2はMGRES供給となっている。モルドヴァ政府は、沿ドニエステル共和国と政治的に対立する裏で、ちゃっかり経済の恩恵に与っているのだ。

「無料」の輸入天然ガス

 沿ドニエステルのごとき極小国の企業が国際競争力を有する理由は簡単である。電炉や発電の燃料たる天然ガスのコストが著しく安いためである。

 今日、モルドヴァおよび沿ドニエステルのガス供給は、モルドヴァガスとガスプロムの契約によっている。モルドヴァガスは、ガスプロム(50%+1株)、モルドヴァ政府(35.33%)、沿ドニエステル政府(13.44%)の持ち株比率で創設され、ガスプロムとの契約が、モルドヴァおよび沿ドニエステル「両国」の供給量・価格を決定してきた。

 しかし、2005年、沿ドニエステルは、ガスプロム社との単独契約を求め、一方的にこの契約形態から脱退してしまった。これ以降、沿ドニエステルは、モルドヴァガスが契約した価格に従わず、ガスプロムへの支払額も未確定であるとして支払いを留保し続けている。

 ガスプロムはと言うと、なぜか供給停止措置を取っておらず、累積未払い代金は既に沿ドニエステルの国内総生産(GDP)の2倍にまで積み上がっている。

 ガスプロムは、供給停止に否定的である理由を「沿ドニエステル下流の消費国のみならずサウスストリーム計画に悪影響を与える」としているが、一方でEUという最重要消費者を下流に抱えていたウクライナに対しては容赦なく供給停止した事実を考えると、沿ドニエステルが特例とされていることがよく分かる。

 ロシア企業がMMZやMGRESを買収した時期と、沿ドニエステルがモルドバガスから離脱してガス代金を滞納し始めた時期が重なっているため、不払いの一件はロシア側の入れ知恵ではないかとすら思えるほどだ。

 その証拠に、沿ドニエステルが不払いを開始して以降、ガスプロムの沿ドニエステルへのガス供給量はなぜか増えており、MGRESの発電量も伸びている。安い天然ガスでMGRESが輸出を伸ばして潤っているのは歴然とした事実である。

 例えば2008年度、ガスプロムとモルドヴァガスの契約ではガス価格は1000立方メートル当たり240ドルであったが、沿ドニエステル国内では、発電所向け36ドルという法定価格が設定されていた。

 周辺国に比べ、10分の1以下というコストである。こうした沿ドニエステルの価格政策は、ガスプロムにガス代を支払わない限り、破綻することはない。

 ガスプロムが損を被り、統一エネルギーシステムやウスマノフが儲ける、という図式は、かつてロシア企業が得意としていた移転価格と見なせないわけでもない。

 しかし、ガスプロムの債権は将来的には、モルドヴァや沿ドニエステルの資産と相殺可能なのだから、単なる損失ではない。

 そして御多分に漏れず、ロシア資本の儲けの流れは不明朗である。MGRESのルーマニア輸出には、お約束のようにペーパーカンパニーが仲介者として存在しており、ウクライナへのガス輸出を仲介していたロスウクルエネルゴを髣髴させる。

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 以上のように見ると、ロシア政府(あるいはプーチン)にとって都合がよい沿ドニエステル政権とは、曖昧な「非承認」という立場を堅持しつつ、ロシア資本の企業活動を無条件で保障してくれる政権である。

非承認国家の「親ロ」外交

 スミルノフのように、本当に独立しようとしたり、取引に不正があるとしてMMZの輸出を差し止めたりする指導者は困るのだ。

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 沿ドニエステルが、再統合であれ分離独立であれ、国際的に承認された国家になってしまうと、ガス未払いレトリックは使えなくなる。

 今の「非承認」ステイタスが続く限り、ロシア資本の儲けは続くし、モルドヴァへの外交カードも維持し続けることができる。強い批判の中で選挙資金を必要とするプーチン陣営にとって、沿ドニエステルは容易に手放すことができないオフショアでもあるのだ。

 一方、シェフチュク新大統領の下、沿ドニエステル国では、既にモルドヴァ間での往来手続きが大幅に簡素化されており、政治面でも報道の自由といったリベラル化が予想されているが、親ロシア政策まで変更することは不可能である。

 非承認国家のリーダーたちは、親ロシアである限り欧米諸国からの承認は得られず、ゆえに「非承認」から脱することができないことを理解している。

 しかし、軍事や援助金のみならず住民の出稼ぎ先や年金支給までロシアに頼る状況では、忠誠心を飼い主に示し続ける以外の選択肢は彼らに存在しないのだ。

(JB Press   海外)
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