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2011-08-19(Fri)

任天堂はなぜ「ニンテンドー3DS」を値下げしたか

 任天堂は8月11日、携帯用ゲーム機「ニンテンドー3DS」の値下げ(2万5000円→1万5000円)に踏切った。発売から半年たらずという前例なき短期間での決定と、1万円という40%の値下げ幅という異例ずくめの発表は、業界内外にさまざまな反響をもたらした。同社の岩田聡社長は今回の経営判断を「信頼を損ない、批判を受けかねないことだと痛感」、自身の年俸定額部分の50%カットと早期購入者に対し20本のソフトコンテンツダウンロード権(アンバサダープログラム)を付与すると発表した。批判を受けることは承知の上で、任天堂はなぜ今回の値下げを断行したのだろうか。

 任天堂が値下げを発表した翌日、岩田社長は値下げを決断できた理由として、任天堂のリッチな財務体質と、2001年に発売された家庭用ゲーム機「ニンテンドー・ゲームキューブ」の教訓を挙げた。岩田社長によれば、現経営陣は全員、「ゲームキューブの時にチャンスがあったのに、それを活かせなかった」という意識を共有しているという。

「ゲームキューブ」の教訓とは、なにか。岩田社長が任天堂に取締役として入社した2000年、ソニーが「プレイステーション2(PS2)」を、セガが「ドリームキャスト」をそれぞれ発売し、翌年ゲームキューブが発売された。中でもPS2に対するマスコミの注目度は高く、発売されたばかりの「DVD」が再生できるゲーム機というオトク感と、「プレイステーションの父」久多良木健氏のソニー批判、国が「軍事転用が可能なほど高性能」としてPS2に輸出制限をかけたなどの話題も尽きず、報道が加熱した。その過熱ぶりは、業界内で「ソニーは1円もかけずに100億円相当の広告効果を得た」という噂が出回ったほどである。

 最近は、任天堂を根拠なくこき下ろしてSNS系ビジネスを持ち上げる報道もよく見るので、この「世論の風向きに気をつけること」も、ゲームキューブの教訓のひとつかもしれない。なにしろ、モバゲーの直近四半期売上高(346億円)は任天堂(939億円)の3分の1程度なのに、ビジネスの主役が交代してしまうらしいご時世である。ちなみに業界内では「任天堂はSNSよりも『携帯機はPS Vita(プレイステーション・ヴィータ)』という流れに行くのを恐れているのではないか」という声が大勢だ。

 本連載19回でも指摘したとおり、PS Vitaの業界内評価は高い。3DSの値下げを受けて、PS Vitaも値下げ圧力が高まりそうだが、おそらく日本のソフトメーカーの多くは現在のPSPビジネスを引き継ぎたいので、PS Vitaの支持は変わらないだろう。

 加えて、苦戦しているはずの海外市場での評価も高い。EA Sportsプレジデントのピーター・ムーアも、PS Vitaについては「今まで見た中で最高の携帯機」と絶賛、一方で「‎3DSに250ドルの価値があったら、みんな買っているよ」と発言している。また、ある業界人は3DSのマイナス点として、「PS Vita、Wii U、PS3、Xbox 360はマルチプラットフォーム展開が容易だけど、3DSはそこに入れられない。コストを分散できないのはきついよね」と、マルチプラットフォームビジネスができない点を指摘する。海外はともかく、日本のメーカーであれば、手堅く30万枚クラスのヒットを確保したいというのが、PS Vitaに対する“最大公約数的”本音のようだ。


SNSがこようが、スマホがこようが、任天堂が携帯系市場で勝つ歴史的理由

0img_62c36aa21c860199d6264ecad898ed1012417.gif 話を元に戻すが、PS2旋風が吹き荒れていた頃、任天堂はどうしていたのだろうか。右の図はゲームキューブが発売された当時(2000~2002年)の国内据置機別普及台数をグラフにしたものである。ゲームキューブの発売台数が、2000年単年のPS2の発売台数より少ないことが読み取れる。ゲーム機ビジネスが長く成立するためには、一つの国か地域で最低でも500万台の普及が必要とされているが、ゲームキューブは3年経っても300万台にすら到達しなかった。

 それでは、任天堂はジリ貧になったのかと言えば、そんなことはない。なぜなら任天堂は「ゲームボーイシリーズ(2001年以降はゲームボーイアドバンスも含む)」で、携帯機市場で圧倒的優位に立っていたからだ。表の一番下にある「GB」と書かれた棒グラフがその状況を示している。

 任天堂は1989年にゲームボーイを発売して以降、携帯系市場にはソニーのPSPなどさまざまなニューカマーが現れたが、世界王座を一度も明け渡していない。しかし、この携帯系市場に、ディー・エヌ・エーやグリーなどのSNS系ゲームや、DSやPSPに続くゲーム端末としてのスマートフォン(スマホ)などのニューカマーが参入し続けているため、任天堂の牙城が崩れると見る向きも多いようだ。

 この状況を可能にしたのは、携帯ゲーム機以外でもゲームが遊べる端末が登場したこととともに、「ライトユーザーを大量に獲得したDSビジネスの成功が、皮肉にもSNS系やスマホビジネスを可能にさせた」(小山友介芝浦工大准教授)ことも大きいだろう。

 だが、ある業界関係者は「携帯系市場において、子ども市場という基礎需要を持つ唯一のプラットフォーマーである任天堂の牙城を崩すのは容易ではない」と警告する。

「ゲームボーイ市場の需要を支えていたのは、子どもを中心としたユーザーです。ソニーですらこの市場に切り込むことができていません。SNSが登場しても、任天堂の携帯機は子ども市場を確立し、据置機はマリオシリーズを中心に従来の任天堂ユーザーを獲得するでしょう。つまり、任天堂は基礎需要をしっかりと持つ唯一のプラットフォーマーなのです」

「『モバゲー』がターゲットユーザーを10代ユーザーから30代ユーザーに切り替えたのは、青少年犯罪や非行に対する保護者からのクレームが背景にあります。したがって、世界市場レベルで圧倒的優位性がある任天堂と、モバゲーが本気で互角で戦えると思っている業界人は、さすがに少ないと思います」

「しかし、ソフトメーカーにとっては、コアゲーマー市場を開拓してくれるプラットフォーマーでなければビジネスができません。DSとWiiが女性ユーザーやライトでゲーム人口を拡大した恩恵を得ることはできないので、結局、PS VITA、PS3にシフトし、SNSでアルバイトをするような企業経営になるでしょう」。

 たしかに、ゲーム業界において子ども市場という基礎需要は非常に重要だ。しかも、この需要を取り込めているのは歴史的にも任天堂しかないという事実が、任天堂の強みのひとつでもある。このあたりの歴史的背景を知らずに、一時的な情勢だけでゲームビジネスを捉えてしまうと情勢分析を見誤る可能性が高いだろう。


2万5000円は高かった?それとも適正?またしても超えられなかった心理的障壁

 しかし、3DSの2万5000円という価格は適正であったのだろうか。値下げが直接の購買動因になったのであれば、初期価格に問題がなかったとは言い切れないだろう。

 本連載第6回で小山友介芝浦工大准教授が指摘した通り、この2万5000円という価格は家庭用ゲーム機の心理的上限といわれている。その上限を超えて市場を形成できたのは、「ゲームも遊べるDVD再生機」であるPS2(3万9980円)のみだ。3DSはその上限いっぱいを狙ってきたわけだが、小山准教授はこの値付けについて「結果論としては高かった」と語り、次のようにその理由を説明する。

0img_beeca153414c5e560b599fcd21ca6c5311822.gif「任天堂は、DS本体発売以降本体購入者の客単価を上昇させようと様々な手を打ってきました。右のグラフは、各年度のDSの種類別販売台数と、販売台数シェアで加重平均した平均価格の推移です。(年度中に価格改変があったため、2011年の数字では4分の1を旧価格、4分の3を新価格として加重平均)」

「2010年3月に3DSのアナウンスがあったこと、DSの普及がほぼ完了して更新需要が大半だったと思われることがあり、2011年3月期には少し単価が下がっています。しかし、2005年~2010年までの価格推移のトレンドを伸ばすと、2011年には20000円を超えたはずです。これに、新製品のプラスアルファ分5000円を加えて25000円、ということだったのかなと思います」

0img_7c41e754925edf26aee772c119994b692223.gif 「任天堂が本体価格を上げたかった理由としては、(1)携帯ゲーム機のライバルがスマートフォンになったことから、それと対抗できるぐらいの性能を持つハードを作るにはかけられる原価を上げたいこと、(2)OSの更新、新サービスの提供、ネット上のサーバの維持と、販売後もかかる維持費用を上乗せしておきたいという思惑があったと思われます。その意味では任天堂にとって今回値下げは厳しいですが、一部報道では3DSの原価は101ドル(8000円強)と言われていますし、値下げしても本体の原価割れはしていないはずです」。(ただし、任天堂は今回の値下げで逆ざやを主張している)。


サードパーティに発売日の主役は荷が重すぎた?そして強調される年末商戦期の重要性

 一方で、3DSが不評だったのは、初期価格ではなくソフトラインナップ編成を上げる声も根強い。ゲームソフト評論でも定評のある、井上明人GLOGOM研究員は「早期購入者に3DSが不評な理由は、単に値下げがあまりに早く感じられたというのはあるわけですが、それだけでなく『まだ何も遊んでいないうちに値下げをされてしまった』という印象があります。震災からの4か月半の間で、3DSで『ゼルダの伝説時のオカリナ3D』、『レイトン教授と奇跡の仮面』、『ニンテンドッグス プラス キャッツ』がそれぞれ国内で30万本前後ほど売れているというぐらいで、これといってやりこんだゲームがある人は少ないことも原因では」と指摘する。

 小山准教授も「3DSに関しては、ロンチタイトルですら3D機能を使いこなしたタイトルがないことがとても気になります。DSもタッチペンはほとんど使われなくなりましたが、初期は脳トレのようにタッチペンならではのタイトルが存在しました。3DSにそういったタイトルが無い以上、値下げでDSの買い換え需要を狙うしかないのかもしれません」と同じようにソフト編成に疑問を呈している。

 確かに任天堂は過去、新規ハード発売時には同社の人気タイトルを同時に発売していた。たとえば、DSであれば「スーパーマリオ64DS」や「さわるメイドインワリオ」である。この二本は発売後6週間以内でそれぞれ123万本、49万本をワールドワイドで売り上げている(VGChartz調べ)。

 一方、岩田社長は3DSの発売に当たって、他ソフトメーカーにもビジネスチャンスを分けるべく、3DSと同時発売ソフトには他メーカーのものを中心に編成を組んだ(本連載第5回参照)。この経営判断が誤っていたとする声はネット上を中心によく聞かれるが、対ソフトメーカー施策の視点からすると責めるのは少々酷であろう。

 ただし、2004年のDSの発売時と異なるのは、人気自社ソフトの同時発売の有無だけではない。DSの発売は年末商戦時だったが、3DSは2月である。つまり、この二本のソフトのヒットも年末商戦期であったからこそ達成できたということもできる。この事実だけでも、年末商戦期の重要性は理解できるだろう。

 また、ポケモンタイトルを値下げと同時投入してきたことから、先ほど述べた通り「子ども市場」を固めにきたと考えられる。現在の経済状況で子どもに2万5000円を出してやれる家庭はそう多いとは思えないが、子どもをなるべく家の中で遊ばせたい親御さんもいるだろう。つまり、今回の値下げはファミリーユーザー層に向けた任天堂版「子ども手当」だった、という見方もできるのではないだろうか。

 井上研究員も「任天堂はネットで声の大きいゲーマー層に対して不評であっても、クリティカルな問題は避けられるとも考えているのでは。岩田社長は3DSの中心的早期購入者について『ゲームを熱心に遊ばれる方』、『主に若い男性の方』と分析しています。女性や子どもといったより広いマーケットを狙うこと見据えているのならば、ここを外しても、まあどうにかなるとも考えられる。もちろん、任天堂もすすんで不興を買いたくはなかったでしょうが」と指摘する。


3DS同時発売タイトルに「ニンテンドッグス」の続編が選ばれた理由とは

0img_efea0c25757132c7ce8758f4c9e4e61a46115.jpg したがって、この値下げの成否を正確に判断するためには直近の年末商戦期後を待たねばならないが、まずは来月9日に新色「フレアレッド」の発売を控えた米国市場の動向がひとつのマイルストーンになりそうだ。まずは米国市場のてこ入れも勘案して値下げしたのだとすれば、この時期の値下げは理解できる。ここで弾みをつけて、11月のサンクスギビングデー以降の年末商戦を乗り切りたいのではないだろうか。

 また、値下げの成否をどのあたりで考えるかという指標として、DSビジネスが拡大した過程を紹介したい。上の表はDSソフトの世界売上トップ5を並べたものだが、上位4位には共通項がある。それは、3~5年くらいかけて年平均400万本を売ったということだ。

 上位4位のソフトの売上推移を示したのが下のグラフだ。オレンジのラインはこの4本のソフトの平均値である430万本に引いてある。この430万本という数値は世界トップレベルを目指すのであれば超えねばならない壁とも言えるだろう。

            0img_cf45938b3fc481c535fffcecf28a581316319.gif

 DSが発売された2005年にこの壁を越えていたのは「ニンテンドッグス」だけであった。この観点から考えると、3DSの発売日に続編にあたる「ニンテンドッグス プラス キャッツ」が入っていた理由は頷ける。マリオ・ポケモンシリーズ以外でこの430万本の壁を越える可能性が高いソフトだからだ。事実、今年の3月末時点で唯一ミリオン越えを記録し、170万本以上が売れている(緑の★が該当する)。3DSビジネスが成功するかどうかは、このニンテンドッグスの続編の売上も大きなカギを握るだろう。つまり、マリオ・ポケモン以外でコンスタントに年に400万本売れるソフトを3本程度出せるかどうかも、3DSの成否を検討するポイントになりうるということだ。ただし、こんなことは任天堂以外のソフトメーカーでは到底できないが、それがDSビジネスではできたことも任天堂の強さを証明している。


値下げの成否はいつ分かる?

 しかし、である。任天堂はなぜ3DSの発売に踏み切ったのだろう。読者の中にも、「赤字覚悟で本体価格も下げたら、株価まで下がった。役員は給与まで削減した。こんなに苦労するのなら、現行DSのままでも良かったのでは」と思われる方は多いのではないか。筆者も3DS発売以降様々な立場の人から「岩田さんに会うことがあったら、3DSどうするのか聞いてよ」と苦笑混じりに懇願されていたくらいだ。

 そんなとき偶然、E3で行われた岩田社長グループインタビューに参加できたので、直接「ソフトメーカーが3DS市場で食べていけるか不安になっているようですが?」と聞いてみた。岩田社長は「3DSというハードが一定以上広がるかというのがひとつのポイントだが、現行DSシリーズの日本国内における、3000万台を超えるインストールベース(市場規模)は、ゲーム業界史上でも特別な出来事のひとつであり、これは簡単には超えられるハードルではない」と3DSでは以前のDS市場と同じようなビジネスがすぐできるとは思っていないことを認めた上で、次のように答えている。

「ゲームビジネスに限らずどんな娯楽産業も、常に飽きとの競争にさらされています。今までと同じことをやっていたのでは、お客様に飽きられてしまい、これまでと同じ価値を認めていただけません。これは娯楽産業の宿命です。
より手軽な代替手段ができたり、その刺激に飽きたり、時間がなくなったりと様々な要素の中で、ゲームがかつての成功体験を元に今までと同じ方法でただゲームを作るだけだと、おそらく期待していたほどお客さんに届かなくなるわけです。

 我々の産業は基礎需要が保証されていません。30年前に、ビデオゲームがなくても誰も困っていませんでしたし、今この市場があるからと言って、10年後も同じようにあるという前提ではいけないので、変わり続けなくてはいけない。だから、いつも目新しいことを探さなければいけないと思っています。3DSでもWii Uでも、我々は『この構造だと目新しいことを思いつきませんか?』と、お客様に提案しているつもりです」

 任天堂がやっていることがビジネス的に正しいかどうかは、時間が答えてくれるだろう。しかし任天堂はリスクや批判を承知で、娯楽産業を活性化させる不断の努力をし続けている企業のひとつであり、筆者にできるのは市場全体を活性化させる不断の努力には3DSの値下げも含まれているのだろうか、とせいぜい推測することくらいだ。

(DIAMOND online  IT・技術)
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