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2011-05-17(Tue)

日本の領海を守る法律整備を急げ 中国、ロシアにその気にさせないために・・・

 昨年末に尖閣諸島の我が国の領海内において、海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船の船長がいわば超法規的措置により中国へ送還され、あたかも英雄が凱旋したかのように中国では取り扱われた。

 これにより、国民の大多数は何事だと憤りを新たにしたものと思う。

 しかし、このような中国の我が国周辺に対するアクセスは今に始まったことではなく、ここ数年、毎年のように繰り返されてきたのである。

 これまで海洋の重要性に着目せず、ことなかれ主義に徹し対応してきた我が国数十年のつけが回ってきたに過ぎない。そして現在、中国の経済力および軍事力増強とともに、我が国の主権や国益が損なわれようとしている。

 これまでの状況も踏まえ、ここでは、我が国の主権と国民を真に守るために必要な領海等警備に関する法整備の方向について、述べてみたい。

1 戦後、中国の海洋権益争奪の歴史

南沙、西沙諸島

南シナ海の南沙諸島で、フィリピンが領有権を主張するミスチーフ環礁に造られた建造物と掲げられた中国国旗〔AFPBB News〕
 戦後、1951年、サンフランシスコ講和条約により南沙、西沙諸島の領有権を日本が放棄すると、中国は領有権の正当性を主張し始め、南ベトナムと対立するようになる。

 1973年、ベトナム政府が南沙・西沙諸島のフォクト州への編入を宣言すると中国は抗議声明を出し、領有権を声高に主張し始める。

 その年はベトナム戦争が終結し米軍が撤退した年でもあり、力の空白に乗じて主権の拡大を企図している。

 ベトナムは1970年代後半、膨大なバホー海底油田を発見すると南沙・西沙諸島周辺海域に多くの漁船や調査船を出し、領有化を進めていく。

 しかし、1982年に国連海洋法条約が制定され、沿岸国に大幅な海洋資源の権利が明記されると中国は海軍艦艇を派遣し、常続的な展開により実効支配のテンポを早める。

 そして1988年、中国海軍は赤爪礁海戦により、南沙諸島を占領し軍事施設を構築、実効支配を確実なものにする。

 中国側から見れば赤爪礁の海戦としているが、最近の「Spratlyへの侵入」 という映像から見れば、浅瀬に旗を立てているベトナム兵に対し無警告に37ミリ砲により67人の兵を虐殺し、その後ベトナム海軍の揚陸艦を砲撃し撃沈している状況が映し出されており、海戦とはほど遠い。

 領海に侵入したからと言って、警告射撃も威嚇射撃もなく、突然、砲撃により虐殺あるいは撃沈することは、国際法からも慣習国際法からも著しく逸脱しており許されるものではない。

 中国は1992年、米軍がフィリピンのスービック海軍基地およびクラーク空軍基地から撤退すると、南沙・西沙諸島および尖閣諸島を含む領海法を制定している。

 以後、南シナ海の6箇所の環礁を占拠し建造物を構築し、遂に2007年には西沙・南沙・中沙諸島までを行政区「三沙市」に指定し海南省に編入している。

 現在、それら環礁には、対空砲、対艦砲およびヘリポートを建設するとともに、中には、2600メートルの滑走路や衛星通信ステーションまで建設し、実効支配はもとより、その付近の海洋の制海権にもにらみを利かしている。

 言うまでもなく、この地域には、我が国のみならず各国の重要なシーレーンが存在している。

尖閣諸島

 中国が東シナ海に着目し始めたのは、1968年の国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の海洋調査結果により有望な海底資源が発見されたことによる。1970年にこれらに着目した日本と韓国および台湾政府は、大陸棚石油資源共同開発の連絡委員会を発足させた。

 1972年の日中国交正常化により開発は棚上げかと思われたが、何とか日本と韓国は日韓大陸棚協定を署名し、開発に動き出すことになる。

 この時、中国外交部から恫喝的な非難があったが、日本は紆余曲折の後、1978年、国内法を成立させ協定が発効した。しかし、その後、米中の接近もありこの協定が有効に機能したことは、これまで一度もない。

 この当時から1980年代にかけて中国は、先ほど述べたように、ベトナムとの確執や南シナ海に傾倒しそちらに力を注いでいる。

 南シナ海の環礁の領有化が日の目を見始めると、先ほども述べたとおり、1992年に尖閣諸島も中国の領土とする「領海法」を制定することになる。

 以後、中国はその軍事費の伸びとともに海軍力を増強し始め、1990年代になってオーシャンネービーとしてのチャレンジが始まる。

 当時、1989年、中国海軍艦艇「鄭和」が初めて太平洋の日付変更線を越えハワイに入港したことがあるが、当時、米海軍から聞いた話では、ほぼ全員が船酔いで訓練にならなかったと述べている。

 果たしてその当時、現在の中国海軍力の発展を予期できたであろうか。現在の中国海軍力のすさまじい発展ぶりからは考えられない、遠い昔の話である。

 中国海軍は1990年代の10年間に飛躍的な発展を遂げ、2000年代に入ると東シナ海にて米海軍と我が国周辺にチャレンジを始める。

 2001年には尖閣諸島沖に13隻の中国ミサイルフリゲート艦艇が活動、2002年には中国情報収集艦が我が国を1周、以後、頻繁に中国調査船が日本周辺の海域に出没するようになる。

 2004年、中国測量艦がワイヤーを吊り下ろし白樺ガス田付近および沖の鳥島付近を行動、2004年11月、中国の原子力潜水艦による石垣島領海侵犯、2005年、中国海洋観測艦が世界一周の航海途中で沖ノ鳥島南沖の海洋観測、2006年、中国潜水艦の米空母接近。

 2008年、中国の調査船による9時間に亘る尖閣諸島領海侵犯および4隻の海軍艦艇の津軽海峡通峡、2009年、中国漁船および艦船による米海軍調査船に対する妨害行為、2010年、中国搭載ヘリコプターの海上自衛隊艦船への異常接近等、海軍力の能力向上に応じてチャレンジを進めてきた。

 そして法整備についても、1992年の領海法制定以来、海洋に関する新法を次々に制定し、東シナ海の領有化を進めている。

 これはまさに、2003年末、人民解放軍に「三戦」という戦法を命じて以来、その戦い方を東シナ海にも適応し、海軍の活動のみならず他の分野でも実行に移している。

 「三戦」とは、法律戦、世論戦、心理戦を駆使する戦い方で、国家の政治、外交、軍事闘争に用いられる重要な戦法として海洋にも適用され、将来的には台湾の取り込みを図る意味でも中国にとって重要な戦略である。

 このように中国は、南シナ海における西沙諸島や南沙諸島の領有化においても見られたように、第1段階として(1)領有を主張し、第2段階として漁船、調査船および軍艦による(2)既成事実を積み上げ、その後、第3段階に(3)共同開発等による一時棚上げにより、施設を構築し、逐次、実効支配を確立していくのである。

 現在、東シナ海における領有化は上述の段階を状況に応じ変更していることも考えられ、どの段階にあるのか難しいところもあるが、少なくとも第2段階に来ているように思える。

2 我が国の対応

 このように、中国の海洋に対する権益確保の動向は以前から始まっているにもかかわらず、我が国の対応はことなかれ主義的であり、断固とした対応を執ることなく推移してきた。

 特に、中国の漁船のみならず潜水艦や政府専用船舶(公船)による領海侵犯が頻繁に生起しているにもかかわらず、国内法を整備することなく、常にその場しのぎでやり過ごしてきた。

 それらは、日本赤軍のハイジャック等により獄中の11人を釈放したことや強制送還された北朝鮮の金正男事件、あるいは先般の中国漁船船長の送還等、超法規的措置により糊塗され続けてきた一方で、北朝鮮により拉致された方々がいるように同胞の日本人を守りきれなかった戦後の1ページでもある。

 これらは、戦後、我が国が真の勇気と誇りのある法治国家に成りきれなかった歴史であるかもしれない。

 今後の情勢を正確に予測することは困難であるが、少なくとも東シナ海の情勢において中国との軋轢が生じることは容易に予想でき、その際に法の未整備のために我が国の主権や、ひいては国民の生命財産を守れないことがあってはならない。

 そのための法整備を早急に進める必要がある。

3 各国の領海等に関する法整備の状況

中 国

 中国は、1992年2月25日の全人代において「中華人民共和国領海法および接続水域法」(以下、領海法)を採択し、「中華人民共和国の領海の主権および接続水域の管轄権を行使し国家の安全および海洋の権益を守る」ことを明記している。

 この領海法が規定する中国の領土には、ご承知の通り、台湾や日本の尖閣諸島も含まれる。

 そして、外国の軍用船舶が中国の領海を通航する場合には、中国政府の許可を必要とし、さらに、外国船舶の領海における無害でない通行を防止および制止するため、中国政府はあらゆる必要な措置を取る権利を有することが規定してある。

 これらに対し、日本をはじめ、ベトナム、フィリピンも「主権の侵害であり国際法に違反する」あるいは「アジア地域の安定を脅かす」と非難声明を発し法律の実施を抑止してきたが、結局、中国は国際法に抵触する威嚇や力と数による制圧を実行に移し、今日に至っている。

 中国の領海法に基づく具体的な軍の方針やその実施の細部は不明確であり、軍艦に対する対応を含むかどうかは不明である。

 しかし、この領海法の13条には「隣接区内において、管制権を行使する権利を有する」としており、推測の域を出ないが軍艦に対しても、領海等において中国の国内法に違反した場合には武力行使を含めた管制権が行使できるよう、細部の規定でその方針が示されているものと思われる。

ロシア

 1998年のロシア連邦政府決定第20号には、ロシア連邦国境防護の際の武器および戦闘機材の使用秩序に関する法律が定められている。

 そこには、国際慣習の原則および規範またはロシア連邦の海上における規則に違反した船舶に対し停船要求信号を発すること、従わない場合には警告射撃を行うことができ、その結果を直属の長に報告するようになっている。

 なお、その警告射撃に関する決定は、軍艦または航空機の指揮官に委ねられており、間髪を入れない処置が取れ、違反船舶に対する直接の武器の使用決定も軍艦、航空機の指揮官または、その直属の長ができるようになっている。

  ただし、これらの行動により負傷者や死者を生じた場合には、しかるべき検察機関に通知され、「武器および戦闘機材の使用秩序」に違反があったかロシア連邦の法令に従い責任を問われる。

 また、1999年のロシア連邦政府決定第1310号には、水中におけるロシア連邦国境の防護の際の武器および戦闘機材の使用秩序について決められており、水中において国境維持体制に違反している者および侵犯船(人、潜水艦または潜水輸送手段の乗組員)に対し、定められた音響信号を発信し、警告射撃を行う義務を有するとしている。

 そしてさらに、提示される要求を侵犯船が遂行しない場合には、撃破のために武器を使用し、そのことを直ちに統制指揮所に報告するとしている。

 なお、音響信号の発信および警告爆撃および撃破に関して、それぞれ、軍艦の指揮官、艦隊司令官、海軍司令官の順に権限が付与されている。

 外国軍艦および公船の領海内無害通航については、ロシアが締結している国際条約に従い、領海の無害通航の権利を行使することができるとされている。

 その反面、ロシア連邦の安全を保護するため特別に権限を付与された国防当局または国境業務当局は、領海の特定部分について、外国船舶、外国軍艦、他の政府船舶の無害通航の権利を停止することができる ようになっており、この停止海域は事前に公示される。

 さらに、外国の軍艦がロシアに寄港するため領海を通過する場合には、同時に3隻を超えてはならないことも規定してある。

 同時に、外国軍艦が領海、内水および港において、ロシア連邦の法令に従わず、かつ法令遵守の要請を無視する場合には、速やかに退去を要求することができ、平時において現場で解決されない場合には、外交交渉を通じて排他的に解決されるものと事細かく記載されている。

 この措置以降の軍艦や公船に対する処置については記述されていないが、退去要求に応じず、比較的長期にわたり主権を侵害するような場合は、慣習国際法に委ねられることは明らかであろう。

 また、外国船舶(この場合、軍艦および公船は含まれないと思われる)がロシア連邦、ロシア連邦の船舶、航空機、人民に対して武器を使用する場合には、当該攻撃を撃退するための対抗措置は、ロシア連邦の国境に関する連邦法および国際連合憲章に従ってなされなければならないとされている。

 武器を使用する船舶には、警察作用とは異なる断固とした処置が取られるようになっている。

韓国

 韓国は1978年に「領海法」を施行し、外国軍艦および非商業目的の政府公船が韓国の領海を通行しようとする場合には、休日を除いて3日前にまでに韓国外務省に通告することを定めている。

 通知事項は、(1)船名、(2)船番号、(3)通行の目的、(4)通行のルートおよび予定日時である。

 なお同法は1995年、国連海洋法条約の批准に伴い「領海および接続水域に関する法律」に改正されたが、上記の内容については変更はない。

 外国軍艦および公船が韓国の定める法令に違反した場合の措置について記述されたものは確認できなかったが、恐らく国際慣習法に準じて対応がなされるものと思われる。

英国

 英国は領海内における漂泊などの活動を禁じており、これに違反した船舶を臨検等の対象とする「Hovering Act」という法制度が設けられている。船舶の通行が沿岸国にとって有害か無害かにかかわらず、沿岸の一定の範囲における船舶の徘徊自体を禁じている。

 なお、船舶への武力の行使は、ROE(Rule of Engagement)により決められていると思われるが公表はされていない。

 また、外国軍艦および公船に対する法規定については、これも確認できなかったが、恐らく国際慣習法に準じて処置されることを念頭に置いていると考えられる。

フランス

 フランスにおいては「海上における国の検査権行使の方式に関する法律」が1994年に制定されており、ここには「船長が検査の受け入れまたは行き先の変更を拒否する場合は、指揮官または艦長は当該船舶に対して、警告の後、武力行使を含めた強制措置を取ることができる」と定められている。

 また、警告射撃に関する手順や警告の方法も記されており、これらに従わない場合には船長の拘束を目的とする武力行使や船体射撃も認められるが、船体の射撃については首相の許可が必要とされている。

 このように、外交に関わる事柄について、政治のリーダーが直接その判断を下すことが要求されている。

 なお、ここでも外国軍艦および公船に対する処置は確認できなかったが、恐らく国際慣習法を適用し、ROE(Rule of Engagement)により細かく規定されているものと考える。

米国

 米国も明確に定めているものは見受けられず、国際慣習法に従い対応措置する考え方と思われる。

 ただし、「米海軍の海上作戦法規指揮官ハンドブック」には、「沿岸国は、その領海において、無害でない通行を防止するため、必要な場合には武力の行使を含め、断固とした措置を取ることができる」と明記しており、この措置の対象となる外国船舶には軍艦も含むと言われている。

 また、外国軍艦や公船に対する措置は、恐らくROE(Rule of Engagement)で細かく規定されているものと考える。

スウェーデン

 これまでの国と異なり、恐らくスウェーデンが外国軍艦および公船に対する法を明確に定めている国であろう。これは、永世中立国として長い期間、旧ソ連の脅威にさらされ対応してきた歴史があるからではないだろうか。

 スウェーデンは、1992年「外国の船舶および航空機のスウェーデン領域への入域に関する法令」を定め、措置を講じている。そういった点からすれば、この国の法令が最も我が国に参考になる。

 内容は、まず「外国の国の船舶によるスウェーデン領海の通行は国の平和、秩序または安全を害さない方法で行うものとする」と定め、外国の船舶(軍艦を含む公船)がスウェーデン領域内で停船または錨泊することを原則として認めず、潜水艦については浮上航行を要求している。

 細かい具体的な措置は、冷戦時代の1984年に「平時および中立時等におけるスウェーデン領域の侵犯の際のスウェーデン国防軍の措置に関する命令」を発出し、明確に定めている。

 この中で、戦時または中立時には適用せず、もっぱら平時に適用するとして、次の措置を規定している。

 外国の船舶(軍艦を含む公船)がスウェーデンの領域で、前述の「入域に関する法令」で禁止する活動を実施した場合には、その活動を直ちに中止することを命じ、そして、その命令が遵守されない場合には、その船舶を領域から退去させ、必要があれば武力を行使することができるとしている。

 また、同様に「領海内で潜航しているところを発見した外国潜水艦は領域から退去させ、必要があれば武力を行使することができる」と定めている。

 さらに、内水で潜航しているところを発見した外国潜水艦に対しては、浮上を強制し、次に停船を命じ、確認を行い停泊地に回航する。そして、要すれば事前の警告を与えることなく武力を行使することができるとしている。

 これらは、一部、軍艦および公船の主権免除に抵触し国際法上も問題があると指摘する論もあるが、平時に実際に外国潜水艦の侵入により主権を脅かされた経験を有する国としては、平時の防衛作用として、国家の主権侵害に対し国としての意志を明確に示していると言えるのではないだろうか。

 このように、平時の防衛作用を明確に規定している点で参考になる。

4 領海内で沿岸国を害する外国軍艦および公船に対する対処

 海洋法条約は、外国軍艦が領海内で沿岸国を害する活動を行う場合、および外国潜水艦が禁止された領海内潜没航行を行う場合に、沿岸国がいかなる措置を取り得るかについては沈黙している。

 わずかに、領海内の外国軍艦に対して、沿岸国の無害通航の容認、沿岸国の法令遵守の要請および遵守の要請を無視した場合の退去要求について規定してあるのみである。

 外国軍艦の有する主権免除のため、沿岸国は一般には警察権を行使することはできず、外交ルートを通じて問題解決を図ることになる。

 従って、領海内の外国軍艦および外国潜水艦に対しての措置は、慣習国際法に委ねられているのが実情である。

 それでは、慣習国際法なるものは、どのように措置を講ずるようにしているのであろうか。

 慣習国際法であるので明文化されたものはないが、これまでの歴史の中での一定行為の反復または継続という事実的要素と、違反すれば制裁を加えることができると認められるような義務的要素、すなわち法的信念により認められてきたものとされている。

 この2つの要件のうち、一定行為のための反復という客観的な要件が慣習国際法の第一義的なものと言われている。

 ここでは、どの程度、同一行為が反復されたか明確にすることは難しいが、これまでスウェーデンは旧ソ連潜水艦に対する武器使用の例をはじめ、外国軍艦および公船に対する措置が取られた事実はある。

 その中で、外国軍艦および公船が領海内で無害でない活動を行っている場合には、海洋法にも規定してある通り、沿岸国は領海外への退去を要求することはできるが、慣習国際法としてこれ以降の処置について明確な合意が形成されているわけではない。

 しかし、慣習国際法として外国軍艦が退去要求に応じず沿岸国を害する活動を続ける場合には、退去させるために必要な強制を加えることができるとしている文献もある。

 それは外国軍艦が行う有害行為に比例した、限定的でコントロールされたものでなければならず、抑制的である。

 例えば、外国軍艦がスパイ活動あるいは沿岸国の軍事的な情報収集あるいは軍事演習などを行っているような場合でも、まず警告射撃により中止を要求する。

 また、退去要求に応じない潜没潜水艦に対しては、その付近に警告のための発音弾または爆雷投下を行い、有害行為を行う外国軍艦が制止しない、あるいは領海外への退去のためのすべての手段が失敗に帰した後にのみ、武力行使をなし得るとしている。

 また、外国軍艦の領海侵入が武力攻撃を構成する場合には、沿岸国は当初より自衛権を根拠とした対応をなし得るとしている。

5 立法の方向

 戦後60年以上が経過し、日米同盟の下、我が国は安全と水と空気はタダという認識で経済的に発展してきた。

 しかし、中国の軍事力増大や北朝鮮の推し量ることのできない暴挙もあって、この西太平洋における不安定要因は増えることはあっても減ることは考えにくい。

 戦後、力を背景とした外交により、北方領土はもとより竹島をはじめ我が国の領土、領域は侵食され続けてきた。

 これら不法占拠されている我が国の領土について、我が国の専守防衛という国策や憲法上の制約により、不法占拠を排除する武力の行使はまず考えられない。

 今まで声高に我が国の領土であると唱え続けてきたが、力のない外交交渉が今までいかに無力であったか、もうそろそろ日本国民も感じていることであろう。

 このような情勢下、尖閣諸島をはじめその周辺の漁業活動も含めた我が国の主権あるいは国益がこれ以上、侵食されることがあってはならないし、さらには、国民の生命、財産が失われることがあってはならない。

 紛争が起きる前に、平時の時から我が国の主権を守ることができる法整備が必要である。

 ここでは紙数も限られており、法的に未整備と思われる次の2点について申し上げたい。1点目は、他国が保有している海洋法条約上の軍艦としての権利が認められていないということである。

 海上自衛隊の艦艇すなわち自衛艦は、国際法上の軍艦としての要件を備えており、国際的には軍艦として認められている。しかし、海洋法条約上認められている軍艦としての権利を行使した際には、国内法違反として処罰される恐れがある。

 公海上においても、海洋法には軍艦に与えられる権限として旗国主義が取られている一方、旗国主義の例外として海洋秩序の維持のための種々の権限(近接権、国旗国籍確認のための臨検、無国籍船の臨検、奴隷の運送防止措置、海賊行為の取り締まり等)が与えられているが、平時においては我が国の自衛艦は軍艦に認められるこのような権利を行使しないことにしている。

 自衛艦に海洋法条約に基づく公海上における軍艦の権利の行使が認められれば、種々の面で自衛艦の運用の柔軟性は向上し、我が国領海・領水に至る前に対応できるケースも考えられ、国際法上の軍艦としての権利を明確に示すことが必要である。

 しかし、この権利の運用に当たっては各国も公海自由の原則を尊重して運用されており、公海自由の原則が侵害されることがないよう十分な注意が必要なことは言うまでもない。

 2点目は、他国の軍艦や公船に対する法整備がなされていないということである。これらは前述したように、海洋法は沈黙しているが、慣習国際法にのっとり処置している国がほとんどと考えられる。

 明確に国内法で明記している国はスウェーデンであるが、平時から脅威と感じる国の軍艦および公船が領海内において不法な活動や行動が予想される場合は、国家として国内法で明示し、周辺国にその意志を示すことは当然であろう。

 ご承知の通り、軍艦および公船には、旗国主義が取られ主権が免除され、領海侵犯された国の警察権は及ばない。

 従って現在、我が国の領海に他国の軍艦や公船(中国の調査船や漁業監視船を含む)が侵犯したからといって、退去要求はできるがそれ以上の措置は外交交渉に委ねられる。

 挙句の果てが9時間以上に及ぶ領海侵犯となる。それでは、外交交渉が不調に終わり、数日間もあるいは何カ月も侵犯されたとしても、退去要求のみで過ごすのであろうか。結果的に数日間滞在した事実を積み上げられることになるのではないだろうか。

 このような状況において、前述した通り他国は慣習国際法に従って処置するものと考えられるが、スウェーデンのように明確に国内法で規定し、しっかりした措置を取る国もある。それは、まさしく、平時の防衛作用であり自衛作用である。

 このようなことから立法の方向としては、1点目については我が国の法解釈を明確にして、海洋法条約を準用することを我が国の領海法の中に組み入れ明確にすべきである。

 これまで付随的に法を整備してきているが、それらは我が国の主権を護る意味での真の法律ではない。平時の防衛作用も含む、各国と同様の法整備が望まれる。

 2点目の軍艦および公船に対する法整備については、紛争に発展することも視野に入れ、慎重な議論が必要であろう。

 しかし、これまでの不審船事案の対応のように、防衛省設置法の「調査、研究」に基づき出動したり、あるいは漁業取締法に基づく対応であったりしたが、真に我が国の領海等を平時から護る我が国の領海法をしっかりと整備し対応することが重要である。

 そして、海上における我が国の主権を護る意味での我が国の領海法を決め、平時の警察作用だけでなく防衛作用としての断固とした処置も含まれることを明確に示すべきである。

 ただし、明文化することにより、海上における対応の柔軟性を束縛することや紛争発展への可能性も視野に入れ、実際の行動規範については、ROE等の内部規定により危機管理を執りつつ、真のシビリアンコントロールを発揮するのも方法だろう。

終わりに

 我が国には国家戦略がないとよく言われる。国家戦略を策定し、国家目標を明確にし、それに基づき国民が一致団結努力することにより、我が国は生存と繁栄を持続できる。

 しかし、ないのは国家戦略だけであろうか。防衛戦略、すなわち軍事戦略はどうであろうか。

 地政学的に見れば、日本は周辺を海に囲まれ、人口が都市集中型で縦深性もない島国であり、資源もなく、当面、海洋を通じての自由交易でしか生存と繁栄を享受できない国である。

 また、将来的には我が国周辺における海洋資源の重要性は増すばかりで、海洋資源を通じてのエネルギーの自給自足も夢ではない。

 このような地政学的な状況において、我が国は、できるだけ種々の脅威や紛争を海の上で、あるいは我が国土の外側で済ませることが重要である。

 そして、我が国周辺にある海洋資源を国際法に従い擁護することも必要であり、その努力は結果的に、周辺海域にて事を済ませることにも効果がある。

 我が国土に直接災いが及ぶことが、狭い我が国において悲惨な結果をもたらしたのは、沖縄戦を見れば明らかであろう。

 従って、軍事戦略的には、少なくとも洋上において他国との紛争を食い止める戦略が求められる。

 もちろん、島嶼や国土を防衛する最終的な戦力の無用を唱えるものでもなく、それらが最後の砦として重要なことは言うまでもない。

 現在、国々が海洋における利権に目覚め海洋を巡る争奪は激しくなってきている。しかも体制の異なる我が国を取り巻く2国は、国家予算をほぼ独占的に軍事費に回すことも可能で、核開発をはじめその運搬手段も格段に向上させている。

 「三戦」を駆使し益々軍事力を増大させる軍事大国・中国に対し、これ以上の譲歩は誤ったシグナルを与えると言っても過言ではない。

 有事には日米同盟により我が国は対処するであろうが、平時における2国間問題においては、我が国自らが自国の国家、国益を護る意志が試されている。

 「自分の国は自分で守る」といった日本国民の総意があって、そして、同盟国が困っている時には手を差し伸べる実際の行動があって、同盟国も手を差し伸べてくれる。

 そして、自由と民主主義という共通の理念を持つ国同士が「海洋の自由利用」を確保する共通の目的のため血と汗を流す覚悟があって、初めて国家、国民を護れると思うが、どうであろうか。

 力を背景として迫る周辺国に対し、我が国の防衛力は、沈黙と削減を繰り返すばかりである。今こそ、自分の子供や家族、すなわち我が国の将来を護る覚悟と血税を国防に充てる意志とその実行が必要である。

 まさに、我が国の政治家も経済人も自衛官も国民も、正念場である。

(JB Press  日本再生)
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