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2011-04-11(Mon)

外国人記者が見た「この国のメンタリティ」「優しすぎる日本人へ」

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  「立て板に水。でも中身なし」---外国人記者たちは見抜いている〔PHOTO〕gettyimages

 ピンチにひとつになれるのは素晴らしい。しかし天災と人災を一緒くたに論じたり、身の安全が脅かされているのに政府に情報公開を求めないのは不思議だ、理解しかねる。

 大地震が起きても大きな混乱を見せない日本人を、海外メディアは「ミラクルだ」と賞賛した。しかし手放しで喜べない。彼らは同時に、政府に対してモノ言わぬ日本人を冷ややかな目で見てもいる。

なんて温かい人たち

「最初に取材に入ったのは福島県でした。郡山市内のホテルに宿泊しましたが、福島第一原発で多くの異常が発生していたため、そのホテルから退去しました。空港に行けば別のホテルを紹介してくれるだろうと、案内係の女性にホテルの情報を尋ねたのですが、どこも泊まれるところはないと言われました。

 途方に暮れていると、その女性が『自分の家に泊まってもいい』と拙い英語で声をかけてくれるのです。彼女は夫と子供の3人暮らしで、英語は得意ではないとのことでパソコンの翻訳機能を使っての会話でしたが、この上ないほど優しくもてなしてくれました。まさか外国から来た記者に、被災地の方がここまで温かくしてくれるとは思いませんでした」

 被災地で日本人の優しさを知ったと語るのは、英国のデイリー・テレグラフ紙の記者で、'08年には名誉ある〝British Press Award〟を受賞したアンドリュー・ギリガン氏だ。ギリガン氏は約1週間に亘って被災地を取材した。

 未曾有の大災害に襲われた日本。その被害状況について、またこれからの日本の行く末について、世界中が強い関心を寄せている。地震発生直後、韓国から50人以上の報道関係者が日本に派遣されたのを筆頭に、海外メディアは一斉に記者を送り込み、厚い報道体制を敷いた。

 被災国ニッポンで、彼らはなにを見て、なにを感じたのか。実際に取材に当たった8人の外国人記者に話を聞くと、この国の素晴らしさが見えてくると同時に、その未熟さも浮き彫りになってくる。

 冒頭のギリガン氏は、

「日本行きの飛行機には120人ほどの乗客が乗っていましたが、そのうち20人ぐらいは報道関係者でした。皆、日本の被害がどの程度のものなのかはっきりとはわかっていないようでしたが、まさかこれほどのものとは誰も思わなかったのではないでしょうか」

 と語るが、彼ら外国人記者が最初に直面したのは、想像を絶するような被災地の惨状だった。

「その後、私は陸前高田市に向かったのですが、そこで私を待っていたのは、見渡す限りの残骸と、完全につぶれた町でした。少年たちが倒壊した自宅で持ち物を探していましたが、見つかったのはバスケットシューズ片方と、野球帽だけ。取材中は、記者はできるだけ感情を押し殺さなければならないと思いますが、それでも胸が痛む場面がいくつもありました」

 オランダのテレビ局のレポーター、ハンス・ヴァン・ダー・スティーグ氏も「宮城県の多賀城市、七ヶ浜町で見た光景は、予測もできないほど悲惨なものだった」と話す。しかし、彼が「それ以上に印象に残った」と言うのが、被災地の人々の懸命な姿だ。

「被災地で会った日本人はみな落ち着いていて、感情を露にすることがなかったのには驚いた。もし自分の家が流されていたら、ここまで冷静でいられるだろうか。外国人である私たちの存在をイヤがることもなく、むしろ自分たちの話をしっかりと取材して、海外に伝えてほしいという気持ちを持っていた」

 アメリカの公共ラジオ局NPRのジェイソン・ボービエン記者は、スマトラ沖地震、ハイチ地震、ハリケーンカトリーナの被災地を取材した経験の持ち主だが、「津波で町が粉々になってしまったが、日本人は徐々に復興に向けて動き出している。本当にすごいことだと思う」と話す。

「仕方がない」という心性

 スティーグ氏やボービエン氏のように、日本人の冷静さや前向きな姿勢に驚くとともに、感銘を受けたという意見は、ほぼ全員が共有している。「12日に東京を離れ、22時間かけて仙台に着いたが、その悲惨さは見るだけで圧倒されそうになった」という英国のザ・タイムスの東京支局長であるリチャード・ロイド・パリー氏もまた「それでも被災地の人々の回復力と精神力に、自分も刺激を受けた」と続ける。

「日本には16年間住んでいますが、また新しい日本の魅力を発見した気分です。なぜ彼らは災害時でも寛容で、冷静なのか。イギリス人なら、窃盗はするだろうし、ケンカもする。なのに、日本人はこの悲惨な状況に必死で耐えている」

 パリー氏は、被災地で取材をするなかで、ある日本語をよく耳にした、という。

「なぜもっと要求すべきことを要求しないのか、なぜ忍耐強くいられるのかと尋ねたとき、彼らは『仕方がない』と口々に言いました。この言葉は普段聞くと、諦めのようなニュアンスがありますが、しかし彼らは希望を持ってこの言葉を使っていたように思います」

 中国大手メディアの記者も、「困難に直面していたのに、人々はじっと救援物資を待っていた。信号が機能しないため交通整理をしている方がいたのですが、話を聞くと、彼は地震で父親を亡くしたとのことでした。それでも『この状況下で、自分だけが苦しいわけではない。だからいま自分で頑張れることを頑張るしかない』と答えたのです。

 日本という国の底力をみたような気がします」と話すが、「仕方がない」という言葉を胸に、ピンチのときこそひとつになろうとする日本人の姿は、外国人記者の心を打ち、世界中で驚きと賞賛を呼んでいるのである。

 しかし、一方で日本人は地震で起こったあらゆる物事を「仕方がない」の一言で片づけようとしてはいまいか---外国人記者の口からは、そんな鋭い意見も聞かれた。前出・パリー氏はこう言う。

「避難所では皆ギリギリの生活をしている。被災者は皆頑張っているというのに、(物資もロクに届けられないとは)政府はなにをしているのか、と思うときがあった。被災地の人はもっと声を上げて叫ぶべきではないか。これがイギリス人だったら、政府の注意を引くためにもっと暴れていると思います。ここにも日本人の『仕方がない』精神が表れている気がしますね」

なぜ、おかしいと言わないのか

 地震発生から数日後、国民の不安と疲れはピークに達していたが、その時によく聞かれたのが、「枝野幸男官房長官は100時間寝てないんだ。彼も頑張っているんだから『仕方がない』」といった言葉だ。

 日本人はこの言葉で政府への不満を押し殺していたように思えるが、とりあえず寝ないで頑張る姿を見せていれば、国民やメディアは納得するのか、と海外記者たちは一様に驚いたに違いない。客観的に見れば、パリー氏が言うように政府の対応には問題があり、もっと声を上げるのが当然だろう。

「日本人は常に地震に備えて訓練をしてきた。それが被害を最小限にとどめたことは間違いなく、本当に素晴らしいことだ」と語ってくれた韓国・中央日報のキム・ヒョンキ支社長も、日本政府の対応について意見を聞くと「大変な問題があった」と鋭く指摘する。

「今回の地震対応で、菅総理はほとんどリーダーシップを発揮しなかった。もっと迅速に対応できたはずだが、自分自身で決断できないために、支援体制を整えるのが遅くなったのではないか。さらに、国民へのメッセージも不十分。関東地方は電力不足に見舞われていますが、ひとりひとりの努力のおかげで、停電が避けられている。これに対して、ひとこと『国民の皆さんのおかげです。ありがとう』と謝辞を述べるべきなのに、菅総理はずっと自分のことだけを話していたのではないでしょうか」

「ありとあらゆる手を打っている」「命がけで取り組む」「私の陣頭指揮のもとで」---。菅総理の言葉は、たしかに国民に向けたものではない。謝辞も言えない首相を、なぜ国民は許しているのか。外国人記者の厳しい目は、おそらく日本国民にも向けられている。

 キム氏はさらにこう続ける。

「報道も通り一遍のものが多い気がします。被災地の取材でも『頑張りましょう』という声ばかりで、政府の対応を批判するような被災地の声は、あまり報じられなかったのではないか。日本には『他人に迷惑をかけるな』という文化がありますが、この文化のおかげで、確かに大きな混乱は起こりませんでした。これは良いことだと思いますが、一方でこの文化のせいで、おかしいと言うべきところをおかしいと言えない空気を作り出しているのかもしれませんね」

 確かに、冷静に考えれば政府の対応をはじめ、今回の地震では「おかしい」と思えることが少なくなかったはずである。しかし、日本国民は「仕方がない」と我慢しているのか、あるいは政府も被害者だと同情してしまったのか、なにも声を上げようとしない。

 特に原発問題について、外国人記者は率直に「日本政府の対応には問題があるし、日本政府の情報は信用できない。それなのに、日本人は政府を非難しようともしない」と疑問を呈する。

 福島第一原発からそう遠くない福島県郡山市で取材を行っていたイギリス人の新聞記者、ロバート・メンディック氏も、

「原発から離れており、日本政府が『ここまでは被害が及ばない』と宣言している場所だったが、できれば長居はしたくなかった。私たちは日本政府が発表する原発情報より、やはりイギリス政府から発表される情報のほうをより信じていました。私がもし日本に住んでいたら、家族のことを考えて一緒に避難していたでしょうね」

 と日本政府への不信感があったと明かす。

 さらに前出のアンドリュー・ギリガン氏は「日本政府の発表する情報は後出しばかりで不明瞭だった。それも内容がコロコロ変わっていた」と指摘したうえで、こう続ける。

「イギリスであれば、メディアが政府に情報公開をするよう強い圧力を掛けていただろうし、大臣クラスが何人も辞任していておかしくない事故だ。例を出すなら、イギリスでも10年ほど前、タンクローリーの運転手たちが数日間にわたるストを行い、石油の供給がストップしたことがあった。

 たった数日のことなのに、店が全部閉まった。これが引き金となって首相の退陣を求める声が高まったが、言うまでもなく日本ではそれ以上のことが起きているのに閣僚は誰も辞めようともしないし、きちんとした説明をしようともしない。欧米と比べると国民と政府・政治家の間にいい意味での緊張関係がないのだろう。日本の政治家は命拾いしたのではないか」

 古い情報を小出しにし、明確な説明を避けるかのような枝野官房長官の姿勢は、自分の国ではあり得ないことだ---。海外の記者は口々にそう言うが、おそらく彼らからすれば、そんな姿勢を許してしまっている日本のメディア、ひいては国民の姿も奇妙に映っていることだろう。

どうして許してしまうのか

 ニューヨークタイムズ東京支局長のマーティン・ファックラー氏は、政府の原発対応と同じく、東京電力の対応にも問題があったと見ている。

「原発にトラブルが発生してからの東電の対応には、間違いがたくさんあったのではないでしょうか。東電には中央省庁から天下った役人が多くいるため、官僚的な体質になっているのでしょう。

 誰も責任をとろうとせず、誰も誠意のある情報開示をしない。'55年体制下の日本では、こうした場面がよく見られましたが、今回はその最悪のケースを見ているようでした。

 アメリカであればメディアやNGOが、ここまで無責任な企業を許していないでしょうが、不思議と日本のメディアや国民の多くは、東電の責任追及を行う気がないようにも見えますね」

 政府や東電の対応の遅さが原発被害の拡大を招いた以上、これは天災ではなく人災である。それを政府も東電も「想定外の災害だったから」の一言で片づけようとしている。他国であれば決して許されることのない強引な論理を、日本人はなぜ許してしまうのか。なぜもっと不満の声を上げないのか---。海外メディアの記者たちは、その「優しさ」と「仕方がないの精神」に驚くと同時に、戸惑っているようにも見えた。

 地震に見舞われた日本の惨状と、その惨状に耐える日本人の姿を海外メディアが報じることで、世界中が日本に支援の手を差し伸べていることは事実だ。前出の中国人記者が「中国のネットでこんな書き込みがありました。

『もし日本と中国が戦争になれば、私は最前線で戦う。しかし、日本が災害に見舞われたときは、最前線で彼らを救いたい』と。

 中国国民の多くは、なんとか日本を支援する方法はないかと真剣に考えています」と説明するように、世界の国々は日本のことを本当に心配してくれている。

 しかし、彼らは温かい手を差し出す一方で、厳しい視線を日本に向けていることも事実だ。そして彼らは同時にこうも思っている。本当は日本国民自らが上げなければいけない声を、なぜ海外メディアが代弁しなくてはならないのか、と。私たちはこのまま「優しすぎる日本人」で居続けていいのだろうか。

(現代ビジネス  経済の死角から)
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