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2012-03-02(Fri)

ロンドン大学のロバート・ ウィンストン教授 男でも妊娠可能な医療技術を発表

最新の医療技術を使えば男性が妊娠して赤ちゃんを産むことも可能―。2月21日付の英日曜紙サンデータイムズは、イギリスの体外受精の先駆者のひとりであるロンドン大学のロバート・ウィンストン教授のこんな常識を覆す見解を紹介した。

教授によると、体外受精した胚(はい)を男の腹腔内に移植し、大腸などの内蔵に「着床」させる。胎児は胎盤を通じて大腸から栄養分を吸収して成長、臨月を迎えたら開腹手術で取り出す。男性には流産を防ぐため大量の女性ホルモンを投与する必要があるが、原理的には女性の子宮外妊娠と同じ。実際にイギリス・オックスフォード州で、受精卵が女性の腹腔内に移動して大腸の表面に着床、無事に育って生まれるという珍しい子宮外妊娠の例があった。

同性愛の男性カップルにとっては朗報? かもしれないが、早くも賛否両論が出ている。ノッティンガムの不妊治療センターのサイモン・フィシェル博士は、女性が事故で子宮を失い、代理母使わずに子供をつくりたいと望んでいるカップルには倫理的に問題はなく、危険性さえなければ施術するだろうと賛成論。これに対し、やはり体外受精専門家のイアン・クラフト氏は、「男が妊娠可能でも、認めるかどうかは別問題。危険が伴うし、自然の摂理にも反する」と反対を表明した。

http://www.milkjapan.com/1999jn14.html
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2012-01-04(Wed)

ウェイド・アリソン【オックスフォード大学名誉教授】 放射線の事実に向き合う ― 本当にそれほど危険なのか?

【要旨】(編集部作成) 放射線の基準は、市民の不安を避けるためにかなり厳格なものとなってきた。国際放射線防護委員会(ICRP)は、どんな被曝でも「合理的に達成可能な限り低い(ALARA:As Low As Reasonably Achievable)」レベルであることを守らなければならないという規制を勧告している。この基準を採用する科学的な根拠はない。福島での調査では住民の精神的ストレスが高まっていた。ALARAに基づく放射線の防護基準は見直されるべきである。

科学的知見ではなく、政治的に決まった放射線の国際基準

ある特定の場所、特定の時間において、再生可能な資源はエネルギー供給に重要な貢献を果たす事ができる。しかし、それらは完全なエネルギー問題の答えとしては高価であり、信頼性のあるものとはいえない。原子力発電は大規模に石油に代替できる唯一の有効なエネルギー源であるが、放射線への懸念により、多くの人々にとっては受け入れがたいものである。

福島の原子力事故から8ヶ月の間、原子力問題に関する報道が数多く出ている。しかし放射線による死者は出ていない。これは大変興味深いことだ。通常は、これほどメディアの注目を集め続けるような大事故であれば、何10、何100どころか何1000人もの死者が出ているものだ。福島では3基の原子炉が自壊した。

この規模だとウィンズケール(1957年、英)、スリーマイル島(1979年、米)、そしてチェルノブイリ(1986年、ウクライナ)での1基のみの原子炉事故よりも状況は悪い。しかし、チェルノブイリを除くいずれの場所でも死者はでていない。チェルノブイリでの死亡者数は、現在では50人未満であったと確定されている[1]。私たちは何か間違いを犯したのだろうか。放射線は一般に考えられているよりも害が少ないのだろうか。

放射線は途方もなく危険であるという視点は、科学よりも歴史に基づいている。冷戦時代に、放射線への恐怖は重要かつ効果的で世界に通用する兵器のようなものであり、各国の国内においても極端な反応を起こすことは避けられないものだった。当時、人々が自由な意見表明を認められていた国では、多くの人々が核兵器と放射線から解き放たれた生活を求めてデモ行進し、投票した。

こうした圧力に応え、国際放射線防護委員会(ICRP)は、今日でもなお[2]、どんな被曝であっても「合理的に達成可能な限り低い(ALARA:As Low As Reasonably Achievable)」レベルであることを守らなければならないという国際的な放射能規制を勧告している。それは岩石や空間、人の体内にある放射能といった自然界にある放射線を基準としている。「確実に安全」と思われる比較的少量の増加分の放射線のみを基準で安全と認めている。そしてそれは社会に安全と再確証を与えるものだった。しかし、その基準は「それ以上の放射線量であったら安全ではない」という意味ではないのだ。

新技術は導入に際して過剰なリスク配慮が行われる

このような ALARA レベルは立法や原子力産業の現場ですぐに重要な基準になった。しかし実際には、人々の健康を侵す危険のある水準よりも何十倍も低いままである。さらに放射線に対する恐れを和らげるために設定されたにもかかわらず、実際にはそれに失敗している。社会が情報のないままメディアに煽られ、不安を募らせたままである。そして放射能防護規制への政治的圧力はさらに制限的な方向へ向かっている。

新しい技術がもたらされる時にリスクはきちんと理解されず、監視や管理の体制は不十分だ。だから、安全に対する事前の予防策を考えるのは理屈にかなっている。例えば「蒸気自動車」が初めて登場した時、はじめは蒸気だったが後に内燃機関によって運転されるようになった。市民からの圧力を受け、時速2~4マイル[時速3~6キロ]で走らなくてはならないという安全法が1865年の赤旗法(英国)として成立した。

現代の文明化において幸運だったのは、偶然にも放射線が発見されたのと同じ年の1896年には、このような交通規制は20倍またはそれ以上に緩やかになったことである。はじめ人々は、初期段階の技術水準の交通手段は受け入れられない(また、馬を驚かすだけだろう)と考えたが、次第に技術が改善されて事故率は低下した。人類はリスクを受け入れ利益を得ることを受けいれたのだ。

交通では今でも、人間のすぐそばを通る乗用車など、極端に危険なことがすぐそこにある。しかし人々はこういった危険を日常の中で避けている。19世紀に普及していた規制は今日では考え難いものであり、例えば子供に対して道路による移動を禁じるといったような、特別な規制を提案する人は現代にはいないだろう。

利益に対するリスクを考え、技術に向き合うべき

放射線の安全性と原子力技術の扱いを、他の技術に比べて特別にする理由などない。経験に照らし合わせて、利益に対するリスクのバランスを取りながら扱うべき問題だが、不幸なことに現実はそのようにはなっていない。1951年、安全レベルは1週間あたり3mSv(1ヶ月あたり12mSv)に設定されていた[3]。

市民がこのレベルの放射線で安全にすごせる記録があったにもかかわらず、1951年以降には一般市民を対象に推奨される基準の最高値が、 ALARA の名のもとに150倍低く「減らされて」設定されたのだ。これは賢明だったのだろうか。臨床医学において、個人の健康に効果のある放射線の被曝実験では、安全レベルは1週当たり3mSvの8倍「増やして」いいかもしれないと提案されている[4]。

偶然だが、放射線をめぐる状況は、交通速度規制の緩和化と、さほど異なるものではない。興味深いことだが放射能を科学的に解明してノーベル賞を受賞したキューリー夫妻のうち、妻マリー・キュリーはその研究活動において莫大な量の放射線を浴びたにもかかわらず1934年まで生存した(享年66歳)。一方で夫であるピエール・キュリーは1906年パリで馬に引きずられるという交通事故で亡くなった。最も有名な科学者たちとはいえ、このケースから、放射線の危険性について結論づけるのは科学的ではないことだが。

福島、そして世界で過剰な規制によるコストの再考を

医療用の画像診断に用いられる放射線は、患者に対し内部または外部の放射線源から照射することで、1回当たり5~10mSvの被曝量である。日本政府が最近定めた[5]放射能セシウムの基準値まで汚染された肉を食べて、この放射線量と同じ量だけ被曝するには、およそ4ヶ月の間に1トンの肉を食べなくてはならないのだ。この規制は不合理だ。福島における避難方針のよりどころとなった基準同様、これは ALARA を由来としている。

その方針は1年に2回全身の CT スキャンを受けたのと同量のレベルを基準としている。放射線治療中の患者は、悪性の腫瘍をなくすために、10~20cm四方の組織や臓器に「1000回」、またはそれ以上の CT スキャンを受けるのと同量の被曝をしている[4、6]。そのような治療において放射線を浴びた組織および臓器は、通常機能を失うことはないし、このような放射線治療に感謝する友人や親類を持つ人がほとんどだろう。この事実から考えても、この基準以下の放射線は無害であると確実に言えるだろう。

チェルノブイリでは、同様の食物および避難方針が、社会的および心理的に深刻なストレスをもたらし、放射線そのものよりも広範囲な健康被害をもたらしてしまった[1、4]。この不幸な過ちが、福島でも繰り返されている。厳然な統計はまだ入手できないものの、最近福島を訪れた際、私は地元自治体の首長や医師、教師などから、放射線に対する恐怖や現在の政策が、絶望を生み、ビジネスを崩壊させ、自殺の原因となり、またコミュニティを崩壊させ、高齢者の間に生きる目標を失わせているかということの、説明を受けた。

現在の厳しい放射線の「安全」基準は、科学的な視点からは支持することができないものだ。これは一般市民の漠然とした懸念に応えて生まれたものだが、これを、著しい健康に対する影響なく、おそらく1000倍程度まで緩和しても問題はないであろう[4]。

ALARA の方針をまったく採用しないことによってもたらされる世界規模でみた経済的利益は大きなものとなる。一方で原子力発電の安定化に向けて厳格に制御するためのコストの支出は続くべきであるが、原発という選択肢について支払われる安全コストの大部分は大幅に減るだろう。世界中のエネルギー消費者が、ALARA の不当な追加コスト(廃棄物の処理コストも含む)を喜んで負担するとは考え難い。この観点からみると ALARA を基準とする規制は明らかに再考されるべきである。原子力の「赤旗法」は撤廃されるべきだ。

脚注のリンク:

[1]IAEA Report (2006)and UN Report (2011)

[2]ICRP Report 103 (2007)

[3]reference [2] p. 35

[4]Radiation and Reason (2009)

[5]Royal College of Radiologists (2006)

[6]Japanese Govt. Regulation, 27 July 2011

(Global Energy Policy Research)




メディアの大騒ぎが作り出す原発の「危険神話」過剰報道が風評被害と2次災害を拡大する

 ちょっと宣伝めいて恐縮だが、今年から私の経営するアゴラ研究所ではGEPR(グローバル・エネルギー・ポリシー・リサーチ)というウェブサイトでエネルギー問題についての世界の研究を紹介することになった。

 その第1号の論文でオックスフォード大学のウェイド・アリソン名誉教授は次のように書いている。

 福島の原子力事故から8カ月の間、原子力問題に関する報道が数多く出ている。しかし放射線による死者は出ていない。これは大変興味深いことだ。通常は、これほどメディアの注目を集め続けるような大事故であれば、何十、何百どころか何千人もの死者が出ているものだ。[中略] 私たちは何か間違いを犯したのだろうか。

科学より主婦の実感を信じる朝日新聞

 たぶん誰かが勘違いしているのだろう。放射能による死者は1人も出ていないのに、その報道は2万人近い死者・行方不明を出した東日本大震災に劣らず大きい。

 特に過激な報道を続けているのは、朝日新聞である。10月から続いている「プロメテウスの罠」という連載は、毎日こんな記事が続く。

 東京都町田市の主婦、有馬理恵(39)のケース。6歳になる男の子が原発事故後、様子がおかしい。4カ月の間に鼻血が10回以上出た。30分近くも止まらず、シーツが真っ赤になった。近くの医師は「ただの鼻血です」と薬をくれた。 [中略]

 しかし、子どもにこんなことが起きるのは初めてのことだ。気持ちはすっきりしなかった。心配になって7月、知人から聞いてさいたま市の医師の肥田舜太郎(94)に電話した。肥田とは、JR北浦和駅近くの喫茶店で会った。

 「お母さん、落ち着いて」

 席に着くと、まずそういわれた。肥田は、広島原爆でも同じような症状が起きていたことを話した。放射能の影響あったのなら、これからは放射能の対策をとればいい。有馬はそう考え、やっと落ち着いた。



 原発から約250キロ離れた町田市で子供が鼻血を出した原因が放射能であることは、現代の科学では考えられない。事実この記事も、後の方で申し訳のように「こうした症状が原発事故と関係があるかどうかは不明だ」と書いているが、全体としては「本当は関係があるのだが証明できない」と匂わせる印象操作だ。

 連日こういう主婦の非科学的な行動を紙面で伝える朝日新聞は「政府の線量基準は原子力村の御用学者の決めたものだから信用できない」とでも言いたいのだろうか。

インタビューを捏造するNHK

 NHKは原発事故報道では冷静な報道を行なったが、12月28日に放送された「追跡! 真相ファイル 低線量被ばく・揺らぐ国際基準」という番組は、事実無根の捏造番組である。

 この番組でICRP(国際放射線防護委員会)のクレメンス科学事務局長は、NHKのインタビューに答えて「DDREF(線量・線量率効果係数)の数値についてだけでなく概念そのものについて、これが本当に今でも有効なのかどうかを検討している」と答えているのだが、字幕は「低線量のリスクを半分にしていることが本当に妥当なのか議論している」となっている。

 これは誤訳ではなく捏造である。ICRPは1990年の60号勧告で、DDREFとして「2」を採用した(健康被害の推定を線量に比例する値の2分の1にした)だけである。それをまるでICRPが健康被害のデータを改竄したかのように表現しているのは、意図的な放射能デマである。

 特にクレメンス氏が語っていないことを字幕に出したのは、かつてデータ捏造問題で打ち切りとなった番組「発掘! あるある大事典」と同じ悪質な捏造だ。

 NHKの番組はICRPの17人の委員のうち、13人が原子力産業の出身者であることを紹介して「原子力村」の政治的圧力を示唆する。これによってICRP勧告が緩和されたのなら面白い話だが、残念ながら事実は逆なのだ。

 1990年に出されたICRP60号勧告では、職業被曝は年50ミリシーベルト(Sv)から5年100ミリSvに、公衆被曝は年5ミリSvから1ミリSvに規制強化されたのである。まさか原子力産業が規制強化を求めたわけではあるまい。

ニセ科学者を輸入した自由報道協会

 マスコミがデマを流すのに対してネットメディアがチェック機能を果たすことが期待されたが、起こったことは逆だった。災害報道について最小限度の訓練も受けていない自称ジャーナリストが、未確認の放射能デマを流し続けた。その最大の発信源が「自由報道協会」(上杉隆代表)である。

 特に問題なのは、2011年7月にクリス・バズビーなる人物を日本に呼んで記者会見させたことだ。彼は「福島第一原発の100キロ圏内で癌の発生率が今後10年間で33%上昇し、10万人単位のがん患者が出る」と予告し、「日本政府は福島原発事故の影響をごまかすために福島から放射性物質を日本全国に輸送している」と主張した。

 バズビーの正体が暴かれたのは、高価なサプリメントを売っていることが明らかになってからだ。彼は放射線の影響から日本人を保護すると称して5800円のミネラルサプリや10800円の食品検査を売り込んでいる。

 彼を日本に招いてかつぎ回った岩上安身氏は、その後も横浜で福島から飛んできたストロンチウムが見つかったという誤報を流して批判を浴びた。極めつけは、12月4日に彼がツイッターで放ったこの「スクープ」である。

 お待たせしました。この二週間あまり、議論にもなっていた、福島の新生児の中から、先天的な異常を抱えて生まれて来たケースについてスペシャルリポート&インタビューします。スクープです。 賛否はあるでしょうが、勇気あるカムアウトした当事者には温かいエールをお送りください。

 言うまでもないが、先天性異常は一定の確率で生まれてくる。ある奇形児が原発事故の放射線によるものかどうかは、疫学調査でその地域の奇形児の発生率が有意に高いことが証明されない限り分からない。

 さすがにこの「スクープ」には多くの人々から「福島県人を差別する事実誤認だ」と批判が殺到し、岩上氏はこのツイートを削除して謝罪した。

 福島第一原発事故は、従来は起こりえないとされてきた炉心溶融が起こったという点では国や電力会社の安全神話を崩壊させたが、炉心溶融が起こると数万人が放射線で死亡するという危険神話も崩壊した。放射能による人的被害は、今後とも考えられない。

 それに気づかないでいつまでも大騒ぎしてデマを流すメディアが、被災者の帰宅を妨げ、風評被害を拡大して2次災害を作り出しているのだ。

 今年はそろそろ頭を冷やして、現実を客観的に見てはどうだろうか。政府はこういうデマに惑わされないで、科学的な根拠にもとづいて被災者を帰宅させ、原状回復を急ぐべきである。

(JB Press   日本再生)
2011-09-05(Mon)

「脳科学」という似非世界 「脳科学者」の肩書で世間を跋扈する連中と、マスコミや企業が共謀して作り出したフィクション

 脳の働きや機能は、人類にとって今なお未知の領域である。しかし、自らの頭の中がどうなっているのか、誰しも知りたいところだ。その願望につけ込んでいるのが、「脳科学者」という肩書で世間を跋扈する連中である。彼らの説く「脳科学」は、マスコミや企業と共謀して作り出したフィクションだ。オカルトと言ってもいい。

 ヒトの「心」は脳が生み出す現象であることは明らかであるが、心が激しい感情に襲われるときや悲しみにくれるとき、あるいは強い憎しみにかられるときに、脳の中で何が起きているのか、実は誰一人として知らないのである。

面白おかしく垂れ流すマスコミ

 科学の世界で「真っ当」と考えられている脳の研究者たちは、テレビに出て蘊蓄を語ることもしないし、一般向けの「脳科学本」を執筆することもない。科学者は、市井の人々に語る言葉を持っていないのである。彼らは専門とするごく狭い研究領域の知識しか持たないので、「脳と心」や「脳と人生」について面白おかしく述べることはしない。

 普通の研究者が日々励んでいることは、実験動物を使った基礎研究であり、いかに多くの英語論文を書くかということに尽きる。売れ筋の書籍を書いたところで、アカデミックな世界では、業績とはみなされない。

 では、世間で脳科学者として知られる人たちは、いったい何なのか。彼らの語る脳や心の話は、裏付けのない「ファンタジー」に過ぎない。時には宗教じみたスピリチュアルの世界になる。それでもテレビの視聴者には好評だった。

 そもそも、脳について正しいことを伝えようとすれば、面白味のあることは皆無と言っていい。にもかかわらず、ジャーナリズムは「脳科学」の内容を検討することもなく、似非科学者たちの「学説」を何年にもわたり、面白おかしく垂れ流してきた。

 実際、ここ数年間における「脳科学」のもてはやされ方は異様だった。テレビのバラエティ番組にとどまらず、ニュースのコメンテーターにも自称「脳科学者」が登場した。書店には数々の「脳科学本」が平積みされ、よく売れた。

 このようなブームの火付け役は、川島隆太氏による「脳トレ」であったことは確かであろう。脳トレとは、ゲーム形式で簡単な算数の問題などを解くものだ。東北大学加齢医学研究所の川島氏は、脳トレによって一般の高齢者、認知症患者の認知機能障害が回復すると主張し、脳トレをテレビゲームとして商品化した日本公文教育研究会と任天堂は、多額の利益を得た。多くの人が、「脳トレ」という商品に、認知症治療効果を期待して、金銭を差し出したのだ。

 残念ながら、算数の問題を素早く回答する訓練を積むと、認知機能障害が回復する、という科学的事実はこの世に存在しない。似非である脳科学に対して、真っ当な科学者側からの発言は稀であるが、最近刊行された『精神科医が狂気をつくる』(岩波明著、新潮社刊)では、精神科医である著者の立場から、脳トレについての的確な批判が述べられている。
「脳トレは単なるドリルやゲームであり、それ以上のものではない。ドリルやゲームに治療効果を期待すること自体、意味のないことである」

 この脳トレ以前にも、マスコミは怪しげな脳科学を喜々として取り上げた前科がある。その一例が「ゲーム脳」だ。

 日本大学文理学部体育学科の森昭雄教授は「テレビゲームや携帯電話のメール入力が脳に悪影響を及ぼす」という珍説を唱えた。これはイメージとして直観的に受け入れられやすい説であったらしく、有力なマスコミ各社も科学的な裏付けを確認することなく、珍説に飛びついた。凶悪な少年犯罪とテレビゲームを安易に結びつけ、「ゲーム脳」の説くストーリーに乗っかったのだ。

 森氏の理論は脳波を指標として用いているが、基本的な部分に多くの誤りがあり、理論とも言えない。例えば森氏はα波を徐波と呼び異常脳波に含めているが、α波はもっとも一般的な「正常脳波」であることは医学の常識である。

 マスコミ同様、低レベルなのは行政当局だ。ゲーム脳に関しては一本の医学論文も執筆されていないにもかかわらず、文部科学省の「脳科学と教育」の研究班は、研究テーマの一つとしてこれを採用したのである。あきれた話だ。文科省には、似非科学を見破る能力さえなかったのである。

効能のないサプリや食品を助長

 いかがわしさの程度は異なるが、川島隆太氏の「脳トレ」も、茂木健一郎氏の「クオリア」や「アハ体験」も、実はゲーム脳と大差がない。茂木氏の述べていることは科学的な検証がなされておらず、ファンタジーに過ぎない。

 茂木氏はひらめきの瞬間に感じる体験内容を「アハ体験」と呼び、これにより脳が活性化すると主張。アハ体験をするためのゲームソフトも発売されている。しかしアハ体験とはどのようなものであるか再現可能な形で定義されていないし、脳が活性化することもデータとして示されていない。つまり茂木氏の説は気ままな思いつきの羅列に過ぎないのである。

 マスコミがこうした脳科学を受け入れたのは、話題作りや視聴率のためであったことは明らかだ。しかしさらに悪質なのは、似非科学を利用して必要もなければ効能もない食品やサプリを売りさばいている健康食品業界である。

 脳科学に乗っかった食事療法も、数多くマスコミで取り扱われている。だがほぼすべてが、根拠のない妄説である。クスリへの批判には遠慮ないマスコミも、サプリに対しては不思議と寛容である。

 鬱病からの回復が見られると「5HTPセロトニン」などの神経伝達物質セロトニン関連のサプリの摂取を勧める業者は数多い。これも科学的裏付けはゼロだ。

 鬱病は脳内セロトニンの欠乏が原因だとする「学説」は、確かに存在する。しかしこれは科学的実証がなされておらず、セロトニン投与による治療効果も証明されていない。にもかかわらず、ワラにもすがる思いの患者や家族は、高額のサプリに救いを求め、大枚をはたく。罪作りな話ではないか。

 鬱病や統合失調症が改善するといって、ビタミンの大量摂取を勧める業者や医者もいる。認知症に対しても、数多くのサプリメントが販売されている。しかしどのサプリの効果も、医学的に検証されているとは言い難い。つまりは、明らかな詐欺商法ということだ。

 許し難いのは、こうした犯罪紛いの商法を助長する著作物が、大手を含めた多くの出版社から刊行されている点である。健康を人質に商売に励む企業はもちろん、それをあおるマスコミも指弾されるべきだ。なにより、似非脳科学者たちを妄信する愚を繰り返さぬよう、国民の科学リテラシーを高めることこそ急務である。


(選択  社会・文化)
2011-02-22(Tue)

レアアース代替できた!インクが高感度センサー

 価格が高騰するレアアースの代替素材として、インクに含まれる有機分子を使うことで、世界最小、高性能の磁気センサーの開発に、千葉大の山田豊和・特任准教授(35)ら日、独、仏3か国の共同研究チームが成功したと発表した。

 大きさ1ナノ・メートル(10億分の1メートル)の極小サイズながらセンサー感度は従来品の10倍にアップ。安価な材料でパソコンなどの小型化や高性能化が図れるという。

 研究成果は、21日付の科学誌「ネイチャー・ナノテクノロジー」電子版に掲載される。

 山田特任准教授らが開発したのは、パソコンなどのハードディスクの記録読み取り装置に使う磁気センサー。年々高騰するレアアースなどの代替品として、太陽光電池やディスプレーなどへの応用が進む有機分子に着目。インクや染料・顔料などに含まれているフタロシアニンを使ってみたところ、有機分子1個で磁気センサーの働きをすることを発見。センサー感度も10倍になることがわかった。

(YOMIURI ONLINE  科学から)
2011-02-17(Thu)

成人T細胞白血病:原因遺伝子を特定 マウス実験で京大

 京都大ウイルス研究所長の松岡雅雄教授らの研究グループは15日、成人T細胞白血病(ATL)や難病の脊髄(せきずい)症(HAM)の原因遺伝子をマウス実験で特定したと発表した。松岡教授は「この遺伝子へのワクチンの開発を進めれば、予防や治療につながる」としており、成果は米専門誌「プロス・パソジェンズ」電子版に掲載された。

 ATLやHAMは、ウイルス「HTLV-1」がTリンパ球に感染することで発症する。感染者は国内で約108万人とされ、ATLは浅野史郎・前宮城県知事が発症し注目された。

 研究グループは、全てのATL患者で働いていたこのウイルスの遺伝子「HBZ」に注目。HBZが働くマウスはTリンパ球ががん化してリンパ腫を高率で引き起こすことや、正常な組織を免疫機構が攻撃しないように働く「制御性Tリンパ球」が異常に増加してしまうなど、ATLと同じ症状を呈することを突き止めた。

 また、皮膚や肺の細胞の中にTリンパ球が広く入り込み、HAM患者と同様の炎症を起こすことも確認した。

(毎日jp  サイエンスから)
2011-02-16(Wed)

「世界の全情報処理能力」は「ヒトの脳」に匹敵

世界は、どのくらいの量の情報を送受信し、処理し、保存しているのだろうか。新聞から携帯電話まで、情報を扱う60種類のアナログおよびデジタル技術について、1986〜2007年までの20年余りにわたるトレンドの推移を[南カリフォルニア大学の]研究者らが追跡した。

「2007年時点で、人類が各種のコンピューターを用いて実行できる命令の総数は、1秒間に6.4×1018回と推定される。これは、人間の脳が1秒間に発生させられる神経インパルスの最大数とおおよそ同程度だ」と研究論文には記されている。

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情報の保存

研究者らは、情報保存の媒体について、紙やフィルム、ビニール製レコードといったものなどを含めて徹底的に調査した。媒体相互の比較をするには、クロード・シャノンの情報理論を利用し、「最適に圧縮されたビット」で測定した。(もちろん、推定も大きい。例えば「6平方センチの新聞は1000ワード」等)

2000年には、全情報の70%がアナログビデオの形式で記録されていた(CDとデジタルテープが新たな媒体として台頭し始めていた)。しかし2007年になると、アナログ媒体はわずか6%まで落ち込み、ハードディスクやBlu-ray、DVD、デジタルテープといったデジタル媒体がそれに取って代わった[94%がデジタル化されている。なお、デジタルとアナログの転換点は2002年]。

またこの間、情報の総記録量は年間に約23%ずつ増加していき、2007年には2.9×1020バイト、すなわち約300エクサバイトに達した。これは、地球の全人口にCDが1人61枚ずつ行き渡る量に等しい。

[人類が記録している情報の総量は、1人の人間の全DNAに収められた情報量の300分の1程度という]

上記のようなデジタルへの移行は、放送メディアと双方向通信の分野にも起こった。

放送メディアと双方向通信

放送メディアと双方向通信に関しては、「1秒あたりのビット数」でデータが分析された。

放送メディアでは、1986年には全情報の80%が地上波テレビによって占められていた(アナログ・ケーブルTVも一定のシェアを占めていた)。2007年には、地上波テレビの情報量は50%になり、放送される情報のうち4分の1はなんらかのデジタル形態になっている。

双方向通信に関しては、1986年には全情報の80%がアナログ電話によってやり取りされており、残る20%がデジタル電話、それ以外はすべて誤差の範囲内だった。しかし2000年には、アナログ電話は全世界の双方向通信のわずか2%にまで落ち込んだ。

デジタル電話は、ピーク時の1993年には双方向通信の67%にまで達した(同年、固定インターネット接続は全体の1%の使用率だった)。固定インターネット接続は2000年には50%に拡大し、2007年時点では97%を占めた。それ以外はすべて1%にも満たなかった。

双方向通信の2007年時点での情報処理量は65エクサバイトだったが、放送メディアはそれを上回り、実に2ゼタバイトもの情報を送信していた。

ただし、放送が送信する情報量は直線的に増加しているが、双方向通信は、インターネットの誕生によって爆発的な伸びを示し、伝送されるバイト数はわずか7年で29倍に増加している。

計算能力

計算能力はMIPS(100万命令毎秒:million instructions per second)に変換され、プロセッサーの総数やクラスから推定された。[1986年から2007年までの間に、1年当たり58%ずつ全世界のコンピューターの計算総容量は増え続けたとされる]

1986年には、全計算能力の約40%を電卓が占めており、パソコンの33%、サーバーの17%を上回っていた。しかしその当時から、ゲーム機は9%もの比率を占めていた。

2000年になると電卓は姿を消し、パソコンが86%でピークを迎え、そして携帯電話およびPDAが3%で初めてランク入りした。2007年には、携帯電話は全世界の計算能力の6%を占めるようになったが、さらに目覚しい躍進を遂げたのはゲーム機で、全計算能力の約25%を占めるまでになった。一方、パソコンの比率は全体の3分の2に低下した。また、スパコンの比率は大きな数値ではないという。

(Wired Vision  サイエンス・テクノロジーから)
2011-02-11(Fri)

東大、微生物を選択的に培養できる培地設計理論を開発

東京大学の難波成任教授らによる研究グループは、植物の病気を簡易かつ迅速、そして高感度で安価に診断する技術の設計システムを確立したことを発表した。同技術を用いた診断キットは、専門技術や特別な設備が無くても使用でき、農家や家庭で一般の人が自ら診断できるほか、現場の専門家が従来1週間以上要していた病害診断を最短1日で判定することができるようになるという。米国の科学誌「PLoS ONE」(オンライン版)に掲載された。

農業において、連作障害の原因となる土壌病害や、種子伝染性の病害を含む多くの病害が生産性向上や品質向上の障害となっている。種子伝染性の病気の被害は全世界で年間4兆円に上るとされており、土壌病原菌による被害は、世界で年に10兆円に上ると言われている。こうした連作障害を解決するためには、病原菌の判定と菌に汚染した圃場の菌が発病に達する密度かどうかを判断し、土壌消毒が必要かどうか判定し、適切に土壌消毒を行う必要があるが、そのためには菌の種類の判定と菌の密度を測定する培地が必要となる。また、空気伝染性の病気も無視できず、大豆だけでもその影響は世界で年間8000億円に上るとされており、これらについても菌の種類の判定が必要となるが、その効率的な診断法の統一的設計理論はこれまで無かった。

培地の1つに特定の微生物を検出することを目的に、それのみを生育させる「選択培地」と呼ばれるものがあり、現在では医療、食品衛生、検疫、環境、新薬開発、農業などの諸分野において、選択培地は病原体をはじめとする標的微生物を検出する手法として用いられる。

そのため、これまでにさまざまな微生物を標的とした選択培地が考案されているが、環境中の雑菌を抑制することは容易ではなく、例えば1gの土壌には約100億個の(約1000種に相当する)微生物が存在すると言われており、選択培地の開発は困難とされていた。結果として、すべての標的微生物に対して選択培地が開発されているわけではなく、また、開発されている選択培地は標的微生物以外の微生物(雑菌)も生育してしまう不完全な選択培地しか事実上存在せず、専門家による鑑識でしか雑菌の巣の中に標的微生物のコロニーを見付けることが出来なかった。

これは、専門家が長年の経験と試行錯誤に基づいて培地に加える成分を吟味し組成を編み出し選択培地を設計することでしか判断できなかったためで、偶然と幸運を伴うため、法則性がなく、1つの選択培地が次の新たな標的微生物を対象とした選択培地の開発に参考になるわけではなかった。

今回研究グループでは、あらゆる微生物に対する選択培地の開発に応用可能な、培地設計理論「SMART(Selective Media-design Algorithm Restricted by Two Constraints)」を考案。実際に、その理論に基づいて選択培地を多数設計すると同時に、これまでにないスタイルの検出系を新たに4種類開発したという。

具体的には、完璧な選択性を示す培地を開発するため、従来の培地の成分を5つの要素成分(天然由来物、炭素源、抗生物質、基礎塩類、コロニー指示薬)に分類。これを解析した結果、従来の選択培地の多くに含まれる天然由来物が、雑菌生育を助長することが判明したほか、基礎塩類に関しては5種類の塩が必要十分量であることも判明。これを踏まえ、炭素源、抗生物質、基礎塩類のみを含む選択培地を作ることを目的に、炭素源および抗生物質の2つの制約(two constraints)により標的微生物のみ選択的に培養できる培地の設計アルゴリズムとしてSMARTを確立したという。

研究では、SMART法によって設計される一連の培地「SMART培地」を用いて、イネの重要病害の1つであるイネもみ枯細菌病の病原細菌(Burkholderia glumae:Bgl)をモデルにSMART培地を開発、SMART法の有効性を確認した。

まず、添加すべき炭素源と抗生物質を、「基礎塩類に20種類の炭素源と10種類の抗生物質をあらゆる組合せで加えた培地上でBglのみが生育出来る炭素源と抗生物質の組合せを決定する」方法と、「Bglのゲノム情報を利用し、エネルギー源になる炭素源と使用できる抗生物質を選定する方法」の異なる2つの方法を用いて決定。

この結果、2つの方法で決定した炭素源と抗生物質の組合せは一致し、SMART法による炭素源と抗生物質の設計にはゲノム情報による予測が可能であることが示された。

この場合、「D-ソルビトール」を炭素源に、「アンピシリン、セトリモニウム、クロラムフェニコール」を抗生物質として選択し、基礎塩類に加え、Bgl選択培地としたという。

SMART法を踏まえて新たに開発した診断系は以下の4つ

1.プレート型選択培地
2.カード型選択培地
3.色の変化する液体選択培地
4.その中の菌体数を瞬時に計測する装置

感度は、従来の選択培地に比べ、カード培地と液体培地は10倍、プレート培地と菌体数計測装置は100倍で、液体培地と菌体数計測装置の組合せは1日で結果が分かるため簡易・迅速・高感度なものとなっている。

感度・コスト面に着目するとプレート培地が、簡便性・コストに着目するとカード培地が優れているとしており、先端技術とされる遺伝子検査法は、従来の選択培地に比べ、むしろ感度が低く、1/10で、例えばカーネーション萎凋細菌病の場合、1gの土壌に6000個の病原細菌がいる場合に発病するとされているが、「従来の遺伝子検査法」や「従来の選択培地法」では検出感度が足りないため判定不可能だが、今回開発した4種類の方法のどれでも判定可能であると研究グループでは指摘するほか、プレート培地や菌体数計測装置により発病レベルにまで菌が増えている場合に土壌消毒すればよいので、減農薬につながるというメリットもあるとしている。

さらに、これらの方法を用いた診断キットは、専門技術や特別な設備が無くとも使用でき、農家や家庭で一般の人でも診断が可能で、植物病院開発の診断をサポートする分かりやすい「診断カード」とセットで使うことで、これまで1週間以上要していた診断であっても最短1日で判定できることから、この診断結果をもとに専門家に相談することで人手を減らし、手が回らず対応に困っている現場の専門家も、対処法を的確に助言できるようになると研究グループでは指摘する。

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微生物を特異的に培養可能な選択培地設計理論「SMART」により、植物病診断を容易かつ高速、低コストでできるようになるほか、医療や食品衛生、検疫などへの応用も期待できるという

なお、種子検査の場合、非破壊的なため全粒検査が可能となり、健全と確認された種子だけを播けば理論上病気は発生しないとするほか、同技術は、医療現場における診断や検疫現場における迅速な検査、食品の安全衛生検査のみならず、環境中から有用微生物(ダイオキシン分解菌など)の効率的な発見も容易となり、医薬・植物薬などの新薬開発(スクリーニング)への応用などにも活用が期待されるという。

(マイコミジャーナル  サイエンスから)
2011-02-10(Thu)

iPS細胞から生殖細胞…慶大倫理委が研究承認

 さまざまな臓器の細胞に変化できる人間のiPS細胞(新型万能細胞)を使って、精子や卵子などの生殖細胞を作製する慶応大などの研究計画を、同大の生命倫理委員会が承認していたことがわかった。

 人間のiPS細胞から生殖細胞を作る研究は昨年5月、文部科学省の指針で解禁され、実施されれば国内では初めてとなる。研究を計画するのは、慶応大医学部の岡野栄之(ひでゆき)教授らや加藤レディスクリニック(東京都)などで、文科省の了承を得た上で研究を始める方針だ。

 研究チームは皮膚細胞から作ったiPS細胞に試薬を加えるなどして、生殖細胞に変化させる方法を探る。生殖細胞が生まれる仕組みはほとんどわかっておらず、その仕組みを解明して不妊症や先天性疾患治療への応用を目指す。作製した精子と卵子を受精させることは倫理的な問題があり、文科省の指針で禁止されているため、受精はさせない。

(YOMIURI ONLINE  科学から)
2011-02-04(Fri)

京大と島津製作所 iPS共同研究で契約

 京都大学と島津製作所は3日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の遺伝子の働きなどについて共同研究を行う契約を結んだと発表した。

 契約では、京大iPS細胞研究所(所長、山中伸弥教授)の研究者らが、細胞を遺伝子レベルで分析できる質量分析装置を備えた島津製作所の「ライフサイエンス研究所」を利用し、無数のiPS細胞の中から良質な細胞を見つけ出す研究などを行うとしている。

 京大側は最新鋭の機器を使用して遺伝子レベルでのiPS細胞の研究を進め、同細胞作製の際の安全性向上などを期待。島津製作所側は高品質な分析装置開発につなげたいとのねらいがあるとみられる。

 京大は「より高品質なiPS細胞を作成する手法や基準の確立を目指したい」とし、島津製作所は「協力して、遺伝子と精密機器の両分野での発展を目指したい」としている。

(産経ニュース  科学から)
2011-01-29(Sat)

米医科大学、記憶を向上させるタンパク質を発見

 実験用ラットの記憶の後退に歯止めをかけると思われる方法を科学者が発見、記憶を向上させる物質の探究が新たな転換期を迎えた。

 英科学誌ネイチャーに掲載された研究によると、マウントサイナイ医科大学(ニューヨーク)の科学者は、記憶の形成過程で自然と脳内に分泌される物質が、ラットのある種の記憶の強さと持続性の向上に役立つことを突き止めた。

 科学者によると、この物質――組織の修復だけでなく細胞の成長・発展に不可欠な「IGF(インスリン様成長因子)-II」の名で知られるタンパク質のような分子が脳から遮断されると、ラットは学んだことを忘れてしまう。

 注目されるのは、この研究で、「陳述記憶」――場所や事実、物事を覚える能力――の分野で改善がみられたことだ。「陳述記憶」はアルツハイマー病や認知症で失われることから、研究者はこの「陳述記憶」を改善または維持する方法を長年探し求めてきた。

 「IGF-II」が人間にも有効かどうかを判断するのは時期尚早だが、これまで研究されてきた物質よりも期待がもてる、とニューヨーク大学の認知神経科学者エリザベス・フェルプス氏は指摘する。フェルプス氏は今回の研究に参加していないが、ネイチャーに発表された研究は「厳密」で徹底的なものと評価している。

 「IGF-II」の良い点は、血液脳関門を通過できることだ。これにより、脳に直接注入するのではなく、血流もしくは蒸気による鼻への投与が可能になる。しかも、体内にすでに存在するため、有害ではないと思われる。

 一方で、科学者の目は、体内の他の細胞への悪影響に向けられるだろう、と今回の研究の主席執筆者でマウントサイナイの神経科学教授であるクリスティーナ・アルバリーニ氏は言う。

 アルバリーニ氏によると、長期的な記憶を形成するには、脳内神経細胞を繋げ、その繋がりを強化するためにある種のタンパク質と分子が必要で、「IGF-II」はそのような分子のひとつだという。ただ、アルバリーニ氏は、さらなる研究が必要、との見方を示した。

 アルバリーニ氏は、「理解が進むにつれ、記憶を強固にする方法がわかるだろう。そうすれば、他の分子のターゲットのアイデアを得られる」と述べた。

 実験では、2つに分かれたケージにラットを入れ、ラットがある隅の方に行くと足に軽い刺激を与えた。ラットはすぐにその場所を避けることを学習した。その後、一部のラットの脳の海馬に「IGF-II」を注射した。「IGF-II」を注射されたラットは、数週間後でさえ、別の成長因子や食塩水などを注入されたラットよりも強い回避行動を取った。

 この効果は、脳のある一定部分に限られた。「IGF-II」は、恐怖など、感情的な反応の記憶を処理する扁桃体では記憶改善の効果はみられなかった。

 次の段階としては、「IGF-II」を身体全体に投与し、脳への直接投与と同じ記憶改善効果が得られるかどうかを検証する、とアルバリーニ氏は明らかにした。

(ウォール・ストリート・ジャーナル  ライフスタイルから)
2011-01-27(Thu)

ビフィズス菌が腸を細菌から守る仕組み解明

 ヒトの腸内にすむビフィズス菌は、酢酸を作り出すことで細菌による病気の発症を防いでいることを、理化学研究所などのチームがマウスを使った実験で確かめた。

 体によいとされるビフィズス菌が腸内で働く仕組みを解明したのは初めて。27日付の英科学誌ネイチャーに発表する。

 研究では、無菌のマウスに特定のビフィズス菌を1週間経口投与し、その後に、下痢などを引き起こす病原性大腸菌O157を感染させて腸内を調べた。その結果、O157による血液中の毒素量が、ビフィズス菌を与えていないマウスに比べて5分の1以下に抑えられていた。与えていないマウスはこの毒素で死んだ。

 このほか、大腸の細胞を使った実験から、酢酸が細胞を保護してO157から守っていることがわかった。また、別のビフィズス菌では酢酸を作る量が少なく、血中の毒素量を減らせなかった。

(YOMIURI ONLINE  科学から)
2011-01-21(Fri)

すぐれもの 高温ガス炉 研究進む次世代原子炉

 小型で経済性、安全性は高い。電気だけでなく熱も供給でき、燃料電池車の燃料になる水素もつくれる。そんな使い勝手のよい次世代原子炉「高温ガス炉」の研究開発が各国で進んでいる。国内でも研究炉で各種試験を実施中だが、予算確保が難しく、実用化への道筋が見えない。

 (栃尾敏)

 茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の高温ガス炉試験研究炉「HTTR」(出力三万キロワット)=図。一九九八年に核分裂が連続する臨界に達した後、安全性や基本性能を確認する試験を続けてきた。

 昨年十二月下旬、より厳しい条件での安全性実証試験を実施。炉心の冷却能力が失われたことを想定した試験で、燃料の温度が異常に上昇することもなく、自然に出力が下がり安定した状態になることを確かめた。

 計画通りの結果で、今後、さらに過酷な環境で実証試験を続ける予定だ。

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 【安全で経済的】

 高温ガス炉の特徴は何か。原子力機構の原子力水素・熱利用研究センター長の小川益郎さんは「経済性、安全性に優れている。発電だけでなく水素製造など多様な熱利用が可能。電気や熱の消費地の近くにつくれる便利な原子炉」と説明する。

 一般的な原子力発電所(軽水炉)は、原子炉でウランの核分裂によって生じた熱を伝える冷却材に水を使う。温度は三百度前後。沸騰させ、蒸気の力でタービンを回し、海水などで冷やし、水に戻す。

 高温ガス炉は、燃料は同じウランだが、冷却材は水の代わりにヘリウムガスを使う。温度は約九百五十度にもなる。高温の熱を取り出せるためタービンの発電効率が上がる。軽水炉の蒸気タービンは約30%だが、高温ガス炉のガスタービンは約50%と高効率だ。

 水を使わないので機器、配管を簡素化できる。ヘリウムは化学反応しないから燃料や配管が腐食しにくい。また、炉心構造物に耐熱性の高い黒鉛を使用、炉心が溶融しない設計が可能という。

 燃料は、ウランをセラミック製被覆材で四重に包んだ粒状(直径約一ミリ)。千六百度の高温に耐え、事故時に放射性物質を閉じ込めることができる。

 非常時も軽水炉のように水を強制的に注入せず、原子炉を囲う圧力容器の外側から炉を自然に冷やす仕組みで安全性を確保している。

 HTTRは、昨年一~三月、「九百五十度五十日間運転」を達成した。小川さんは「これまでの試験で、燃料の性能、炉心の特性、冷却材の管理など設計の妥当性を確認できた」と成果を話す。

 【環境にも貢献】

 ガス炉開発の歴史は古い。一九五〇年代に始まり、英国が最初に手掛けた原発はガス炉だった。

 だが、軽水炉は百万キロワット以上の大出力化が可能でコストを抑えられるが、ガス炉の適正規模は三十万~四十万キロワットで、大型化には不向き。当初は軽水炉と並走していたが、停滞を余儀なくされた。

 最近、再び注目され始めたのは発電だけでなく、地域暖房や海水淡水化など多目的利用が可能なためだ。

 特に、地球温暖化対策につながると期待されるのが水素ガスの製造。水素ガスは燃やしても水になるだけのクリーンな燃料だが、天然にはほとんど存在しないから、人工的につくるしかない。

 水を電気分解する方法があるがコストが高い。高温ガス炉の熱を利用すれば「二酸化炭素(CO2)を出さずに水から水素をつくれる。六十万キロワットの高温ガス炉一基で、約六十万台の燃料電池車に水素を供給できる。ガソリン価格との競合も可能」(小川さん)。

 【世界的に動き】

 高温ガス炉開発では中国の動きが加速する。二〇一三年に出力二十五万キロワットの商用炉二基の運転を開始、二〇年までに三十八基を建設する計画がある。米国も高温ガス炉の開発を予算化し、概念設計中。韓国やカザフスタンも意欲を見せる。

 HTTRは一九年ごろの水素製造を目指すが、次のステップの実用炉開発は予算化されていない。小川さんは「政策として軽水炉と高速炉が優先され、高温ガス炉を使う事業者が今はいないのが弱点」と説明。「電源としてだけでなく、CO2削減にも使えることをアピールしたい」と話す。

●記者のつぶやき

 軽水炉、高温ガス炉、高速炉…。次世代原発のタイプはいろいろある。研究が進み安全性と経済性は向上する。国の事情に合わせて選び、導入することになるが、大切なのはどの原発からも出る「核のごみ」への対応だ。

(中日新聞  科学から)
2011-01-11(Tue)

タイムトラベル・瞬間移動するワープ航法って出来る?「時空の抜け道」名大教授が検証法

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 SF小説でおなじみのタイムトラベルや、離れた場所に瞬間移動するワープ航法につながるとされる時空の抜け道「ワームホール」が、実在するか検証する方法を、名古屋大学太陽地球環境研究所の阿部文雄准教授(宇宙物理)が編み出した。米科学誌に論文が掲載された。

 ワームホールは、アインシュタインらが1935年に初めて導入した理論上の存在。人間が穴を通り抜けられれば、光速を超えて移動したり、過去や未来に行けたりできるという説も唱えられている。だが、実際に存在するかどうかを検証する方法がなかった。

 阿部准教授は、地球から離れた星の手前を、別の天体が横切る際、その天体の質量の影響で星の光がゆがんで進むことにより、地球から見た星の明るさが一時的に強まる現象「重力マイクロレンズ」に着目した。この場合、天体が離れれば光は元に戻る。

 一方、質量はないが、天体と同様に周辺の時空をゆがめるとされるワームホールについて計算したところ、同じ状況では、星の光は波のように弱まったり、強まったりする特徴があることがわかった。

 名大は、ニュージーランドに設置された天文台で数千万の星を観測しており、約5年分の観測データをさかのぼって、波のような特徴がある変化が含まれているかを解析する予定。阿部准教授は「理論的な存在を観測する道につながる。大変な作業だが、1~2年で終わらせたい」と話している。

(asahi.com  サイエンスから)
2011-01-10(Mon)

月の水:彗星がもたらす…衝突の際に 日米研究チーム解明

 月の石に重水素の比率が高い水が含まれていることが、北海道大の圦本(ゆりもと)尚義教授(地球惑星科学)ら日米共同グループの研究で分かった。重水素の比率は地球の海水の2倍と高く、彗星(すいせい)の成分と近いといい、月の水は彗星が衝突した際にもたらされたものと推定できるという。論文は10日、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」電子版に掲載された。

 圦本教授は米ウェスリアン大のグリーンウッド教授らとの共同研究で、米有人月探査機「アポロ」が持ち帰った石を分析。元素レベルの解析ができる同位体顕微鏡を使って調べたところ、アパタイトと呼ばれる鉱物結晶の中に0.01~0.6%の水が見つかり、最大0.03%の重水素が含まれていた。

 これまでの学説で月は約45億年前、原始地球に火星クラスの惑星が衝突し、地球から分かれてできたとされる説が有力。月の南極付近に水があることは分かっているが、月誕生時にあった水はすべて蒸発してなくなったと考えられてきた。このため、圦本教授らは月の形成後に氷と岩でできた彗星が次々と衝突し、溶けた水が石に閉じこめられたと推測している。

 一方、地球を構成する地層下の岩石に含まれる水は軽水素の比率が高く、海水が重水素を多く含んでいるのは謎とされてきた。今回の研究で海水も彗星由来の水が希釈されたと考えられる可能性も出てきた。

 東京大大学院新領域創成科学研究科の杉田精司教授(惑星科学)は「彗星は月だけでなく、地球にも落下していたはずで、地球の水の起源を探る突破口になるかもしれない」と話している。

(毎日jp  サイエンスから)
2011-01-07(Fri)

国産エイズ予防ワクチン、来年から米で臨床試験

 国産のエイズ予防ワクチンとしては初めてとなる臨床試験を、国立感染症研究所などが2012年から米国で始める。

 エイズワクチンは世界で開発が進められているが、実用化した製品はまだない。研究チームは動物実験でワクチンの感染予防効果を確認しており、世界初の実用化をめざす。

 臨床試験には、東京大医科学研究所とベンチャー企業「ディナベック」(茨城県つくば市)が参加。非営利組織の国際エイズワクチン推進構想(IAVI)が資金提供する。

 開発したのは、「センダイウイルス」という人間に病気を起こさないウイルスを使ったワクチン。このウイルスに、エイズウイルスのたんぱく質を作る遺伝子を組み込んで、未感染者に注射する。体内で遺伝子からエイズウイルスのたんぱく質が作られると、エイズウイルスが感染した細胞を狙い撃ちする免疫細胞ができ、発症を予防する。

(YOMIURI ONLINE  科学から)

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